研究課題/領域番号 |
23510102
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
高梨 啓和 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (40274740)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 農薬 / 塩素処理 / 変異原 / 精密質量分析 / 構造解析 |
研究概要 |
本研究では、殺虫剤fenitrothionの加水分解物である3-methyl-4-nitrophenol(3M4NP)が浄水場で塩素処理された際に生成する物質を検討している。同定された物質の毒性(変異原性)を測定することによって、浄水場で農薬由来の変異原性物質が生成され得ることを証明することを目的としている。 3M4NPを塩素処理したサンプル中に含まれている物質を高分解能のLC/MSを用いて探索した結果、異なる質量電荷比の物質が数物質発見された。本年度は、イオン強度が高く、比較的高濃度で存在している可能性がある4つのイオンに着目して解析を行った。精密質量分析の結果から、chloro-5-hydroxy-2-nitrobenzoic acid(C5H2NB)などの生成が示唆された。そこで、C5H2NBと予想されたイオンを衝突誘起解離(CID)により開裂させ、フラグメントイオンのパターンを解析した。C5H2NBの市販が確認されなかったため、5-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸(5H2NB)を購入し、そのフラグメントイオンのパターンをあわせて解析した。その結果、当該イオンはC5H2NBであることが支持された。 5H2NBの変異原性および変異原性物質生成(MFP)を測定した。その結果、5H2NBから有意な変異原性は確認されなかったが、有意なMFPが観察された。5H2NBのMFPの比活性と3M4NPのMFPの比活性をモル基準で比較したところ、ほぼ同程度の比活性となった。 一方、3M4NPを塩素処理したサンプル中に含まれている変異原性物質の分画・単離を目指し、リサイクル分取液体クロマトグラフィーを用いた実験を行ったが、変異原性活性の回収率が低く、今後の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の計画は、1) 3M4NP塩素処理サンプルのリサイクル分取液体クロマトグラフィーによる分画、2) 各画分の変異原性強度のAmes試験による評価(変異原性物質が含まれているフラクションの特定)である。本年度は、以上の検討に加えて、平成24年度の研究計画である3) 当該変異原性物質の分子式候補の絞り込み、平成25年度の研究計画である4) CIDによる解析を前倒しして実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究おいて、リサイクル分取液体クロマトグラフィーによる変異原性物質の分画を行った際、変異原性活性の回収率が低いことが課題としてあげられた。また、先行して実施したLC/MSを用いた変異原性物質の探索において、未検討のイオンが存在した。そこで今後は、上記の課題について検討を進めることにより、平成24年度に予定していた成果をより充実させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年3月に開催される予定であった第10回日中水環境シンポジウムの開催時期が4月になったので、これに参加して成果を報告する。また、6月に開催される、Water & Environment Technology2012、9月に開催されるIWA-World Water CongressおよびSETAC Asia/Pacific 2012において成果を報告する。
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