研究課題/領域番号 |
23510105
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
本間 哲哉 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60286698)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | リサイクル技術 / 有用金属 / 低エネルギー / FPD / CRT / 蛍光管 / プリント配線板 |
研究概要 |
平成23年度は、In2O3、ZnO、CuのHF水溶液、HF/H2O2水溶液への溶解度測定、各種金属の酸化還元電位測定、電気分解析出物の結晶構造解析、不純物分析を行った。 In2O3、ZnOの溶解度は、HF水溶液濃度が、それぞれ10 wt.%、40 wt.%で最大の3.9 g/100g-HF、12.5 g/100g-HFであること、HF濃度を20 wt.%で固定したときのCuの溶解度が、H2O2濃度15 wt.%で最大の5.08 g/100g-HF-H2O2であることがわかった。また、FPDガラスをHF水溶液、プリント配線板、各種はんだをHF/H2O2水溶液に浸漬・溶解し、電気化学分析の結果、Ag、In、Sb、Cu、Sn、Pbの酸化還元電位(Ag/AgCl 参照電極)が、それぞれ0.52 V、-0.54 V、-0.047 V、0.175 V、-0.44 V、-0.405 Vであった。さらに、各種廃棄物を溶解したHF水溶液、HF/H2O2水溶液から電気分解して得た析出物のX線回折測定から、析出物が結晶性金属のIn、Ag、Cu、Pb、Sb、結晶性金属酸化物のTb2O3、Y2O3、Eu2O3、Eu3O4であることが判明した。ICP-MS法、原子吸光分析法により、廃棄FPD/プリント配線板の同時処理水溶液から電気分解・析出させたIn、Cuの純度が、それぞれ74~85 wt.%、72.9 wt%であること、In中にPb、Cu、Sb、Ni、K、Feなど、Cu中にAl、Cr、Fe、Sn、Znなどの不純物を含有することがわかった。 各種廃棄物を浸漬・溶解したHF水溶液、HF/H2O2水溶液からの電気分解による有用金属リサイクルの可能性、酸化還元電位差を利用した金属ごとの分離の高い可能性を示したこと、分離メカニズム解明のための基礎データを得たことなどに本研究の意義・重要性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、CRT、FPD、蛍光管、プリント配線板、ICウエハ・チップなどの廃棄物から、これらを分別せず、かつ同時に低温処理(40℃以下)により、In、Ag、Cu、Y、Eu、Auなどの有用金属を分離・リサイクルする技術を確立することを目的としている。 平成23年度は、各種廃棄物を浸漬・溶解したHF水溶液、HF/H2O2水溶液からの電気分解による有用金属リサイクルの可能性、酸化還元電位差を利用した金属ごとの分離の高い可能性を示したこと、分離メカニズム解明のための基礎データを得たこと、液晶ディスプレイ(LCD)パネルガラスからのInと、プリント配線板からのCuについて不純物分析結果を得たことなどの成果があった。 しかし、CRT・蛍光管ガラスから分離・リサイクルした希土類金属酸化物からの金属分離と酸化還元電位の測定、ICウエハ・チップからの有用金属リサイクル、プラズマディスプレイ(PDP)パネルガラスからリサイクルしたAgの不純物分析などについての検討が不十分であった。また、リサイクル金属の応用のための基礎検討が不十分であった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究には、(1)リサイクル可能な金属種の選別・確定、(2)金属元素分離メカニズムの解明、(3)リサイクル金属の応用の3つの課題があり、FPD、CRT、蛍光管、プリント配線板、ICウエハ・チップなどの廃棄物からリサイクル可能な金属種を選別・確定し、高効率リサイクル技術の確立と、リサイクル金属・金属酸化物の光学・電子デバイスへの応用可能性について検討している。 平成24年度以降は、引き続きリサイクル可能な金属種の選別・確定の検討を行い、有用金属リサイクルの高効率化を検討する。また、研究の過程で、より新しい分離・リサイクルの手法を探索する。平成23年度の実施計画で不十分であったCRT・蛍光管ガラスに含有の希土類金属酸化物からの金属分離と酸化還元電位の測定、リサイクル金属の不純物分析、金属種ごとの電気分解条件の最適化を行う。また、リサイクル金属の光学的・電気的特性の評価を行い、光学・電子デバイスへの応用可能性を精査する。さらに、沈殿物からの有用金属分離を検討し、還元メカニズム解明のための基礎検討を行う。電気分解が不可能な金属酸化物・フッ化物の応用可能性も精査していく。さらに、国内学会、国際学会などの会議、学術論文誌への公開や、産学連携の推進なども行っていく。 今後、リサイクル効率、純度、コストなどの詳細や、小規模リサイクルシステムの構築など、実用化への可能性を併せて検討していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、PDPパネルガラスからのAgリサイクルの実験が予定通りに進まず、不純物分析(外部委託)ができなかったこと、学会・論文発表が不十分であったことなどから、予算執行が達成できなかった。 平成24年度以降は、本研究推進のため、溶液フィルタ、不純物分離用フィルタ、フッ化水素酸水溶液、過酸化水素水、シリコン基板、石英基板、各種金属・金属酸化物材料、白金電極、論文投稿・別刷、不純物分析(委託)などの消耗品費、応用物理学会などへの参加のための国内旅費、国際学会参加のための外国旅費、英語論文校閲のための謝金などの予算執行を予定している。平成24年度は合計約130万円、平成25年度は合計約120万円の直接経費の執行を予定している。
|