研究課題/領域番号 |
23510105
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
本間 哲哉 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60286698)
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キーワード | リサイクル技術 / 有用金属 / FPD / CRT / 蛍光管 / プリント配線板 / MEMS / LSI |
研究概要 |
平成24年度は、PDP、LCDパネル、プリント配線板(PWB)、MEMS、LSIからの有用金属リサイクルと、リサイクルInの透明導電膜への応用のための基礎検討を行った。 49wt.%HF/30wt.%H2O2水溶液に、各種ガラス粉末、PWBを個別、あるいは同時に浸漬・溶解し、ろ過して水溶液と不溶物に分離した。また、MEMS・LSIは粉砕し、20wt.%HF/15wt.%H2O2水溶液に浸漬・溶解した。 LCD、PDP、PWBでは、各種金属の酸化還元電位を測定し、各種酸処理と段階的電気分解により有用金属回収を行った。PDPでは、結晶性のAg、Pb、PbO2、Pb代替Bi、Ybが析出した。定量分析結果から、Ag、Biの含有量が、それぞれ95.3wt.%、91.1wt.%であり、Al、Ca、Zn、Mg、などの不純物を検出した。PDP・LCD同時処理では、同様にAg、Bi、In2O3の析出を確認した。析出In2O3と不溶物からは、各種酸溶解と段階的電気分解により、それぞれIn、Ybの析出を確認した。LCD・PDP/PWBの同時一括処理では、Ag主成分の含有金属の陰極析出物と不溶物から、同様にCu、Pb、Inの析出を確認した。MEMS・LSIからは、結晶性Cuの析出を確認した。 リサイクル金属応用では、ITO薄膜形成を検討した。In2O3、SnO2をHClに溶解・加熱して形成したInCl2粉末、SnCl2粉末のエタノール溶液をスプレイし、500℃加熱の石英ガラス基板上にITO薄膜を形成した。シート抵抗174Ω/□を得たが、従来のITO薄膜よりも2桁高かった。 各種廃棄物をHF/H2O2水溶液に溶解し、各種酸処理と段階的電気分解により、金属ごとの高い分離性能を実証したこと、分離メカニズム解明のための基礎データの蓄積が進んだこと、などに本研究の意義・重要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、CRT、FPD、蛍光管、プリント配線板、ICウエハ・チップなどの廃棄物から、これらを分別せず、かつ同時に低温処理(40℃以下)により、In、Ag、Cu、Y、Eu、Auなどの有用金属を分離・リサイクルする技術を確立することを目的としている。 平成24年度は、各種廃棄物を浸漬・溶解したHF/H2O2水溶液からの電気分解、および各種酸処理と段階的電気分解による有用金属リサイクルを実証したこと、酸化還元電位差を利用した金属ごとの高い分離性能を実証したこと、分離メカニズム解明のための基礎データの蓄積が進んだことなどの成果があった。また、希土類金属のリサイクル可能性や、リサイクルInのITO薄膜への応用可能性を示したことも成果であった。 しかし、CRT、蛍光管、PDPに含有する希土類金属酸化物の回収量が微量であるため、酸化還元電位測定と金属分離については検討が不十分であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究には、①リサイクル可能な金属種の選別・確定、②金属元素分離メカニズムの解明、③リサイクル金属の応用の3つの課題があり、FPD、CRT、蛍光管、プリント配線板、ICウエハ・チップなどの廃棄物からリサイクル可能な金属種の選別・確定、高効率リサイクル技術の確立、リサイクル金属・金属酸化物の光学・電子デバイスへの応用可能性について検討している。 平成25年度は、リサイクル可能な金属種を選別・確定し、有用金属リサイクルの高効率化、リサイクル金属・金属酸化物の光学・電子デバイスへの応用可能性検討、酸化還元メカニズム解明などを行い、本研究期間に得られた結果・知見をまとめ、研究を総括する。 平成24年度の実施計画で不十分であったCRT、蛍光管、PDPに含有の希土類金属の酸化還元電位測定と金属分離、リサイクル金属の不純物分析、金属種ごとの電気分解条件の最適化を引き続き行う。また、MEMS・LSIに含有するAuなどの微量有用金属の回収、MEMS・LSI・PWBの同時一括処理の検討を推進する。さらに、リサイクル金属・金属酸化物の光学的・電気的特性の評価とデバイス応用可能性、金属酸化物・フッ化物沈殿物の応用可能性、などを精査していく。リサイクル金属・金属酸化物の応用については、ITO薄膜形成条件の最適化、シート抵抗低減を図っていく。併せて、低コストの小規模回収システム構築、実用化への可能性を検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、学会・論文発表が不十分ではあったが、ほぼ予算執行が達成できた。平成25年度は、本研究推進のため、溶液フィルタ、不純物分離用フィルタ、フッ化水素酸水溶液、過酸化水素水、シリコン基板、石英基板、各種金属・金属酸化物材料、白金電極、論文投稿・別刷、不純物分析(委託)などの消耗品費、応用物理学会参加などのための国内旅費、国際学会参加のための外国旅費、英語論文校閲のための謝金などの予算執行を予定している。平成25年度は、合計約120万円の直接経費の執行を予定している。
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