研究課題/領域番号 |
23510107
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
桑原 一成 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (00454554)
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研究分担者 |
益山 新樹 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30157218)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオディーゼル燃料 / 環境負荷低減技術 |
研究概要 |
本研究では、脂肪酸メチルエステルの詳細化学反応計算・解析を実施するとともに、各種燃料を対象として成分分析、燃料着火性燃焼性試験装置およびディーゼルエンジンを用いた着火遅れ試験を実施する。これらの結果を総合的に評価することによって、化学過程と物理過程の両面を考慮したバイオディーゼル燃料の最適分子構造・組成設計への指針を提案することを目的とする。平成23年度には以下の成果を得た。 数千の素反応から構成される詳細化学反応モデルの中から時々刻々と変化する主要な反応経路を抽出する手法を確立した。この手法によって、脂肪酸メチルエステルの高着火性が、分子内にカルボニル基を有するという局所的な分子構造によって決定づけられていることを解明した。これは、アルカンの着火性が分子長さによって決定づけられていることと異なり、燃料分子構造設計にとって極めて貴重な知見である。 各種植物油からバイオディーゼル燃料を合成する技術を確立し、合成した燃料によって汎用ディーゼルエンジンを問題なく運転することができることを確認した。シリンダーヘッドに圧力センサーを設置し、指圧解析によって、バイオディーゼル燃料の燃焼特性が一般的なディーゼル燃料を用いた場合に類似することを確認した。また、ガスクロマトグラフおよびJIS K 0070による燃料成分分析の手法を確立した。 直噴式ディーゼルエンジンを改造し、4気筒の内の3気筒を用いてエンジン運転を実施し、コモンレール式燃料噴射装置と圧力センサーを設置した残りの1気筒を用いて各種燃料の着火・燃焼特性を評価する装置を構築した。また、定容条件の均一場で着火・燃焼特性を評価するために、急速圧縮装置およびその周辺装置を設計、製作した。今後、これらの試験装置を用いて系統的な着火遅れ試験を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒーター加熱による燃料着火性燃焼性試験装置の実現を検討したが、予備試験によって温度制御が極めて困難であることが判明したため、急速圧縮装置を用いて着火・燃焼特性試験を実施することに変更した。この変更によって実験装置の構築に半年程度の遅れが生じた。しかしながら、詳細化学反応計算・解析を計画以上に進展させることができ、系統的な計算・解析を待たずして、脂肪酸メチルエステルが高着火性を有する本質的な原因を解明することができた。このため、研究全体としてはおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
詳細化学反応計算・解析手法、バイオディーゼル燃料合成技術、燃料成分分析手法らの確立、着火・燃焼特性試験装置の構築はおおむね完了している。当初の計画通り、これらの手法、装置を用いて系統的な計算・解析、試験を実施していく。すなわち、平成24年度には単一成分の各種脂肪酸メチルエステルを対象とし、平成25年度には脂肪酸メチルエステルとアルカンの混合燃料を対象とする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
高額な費用を必要とした試験装置の構築はおおむね完了しているため、平成24、25年度の研究費を、主にこれらの試験装置やバイオディーゼル燃料合成装置のメンテナンス、各種燃料や試薬の購入、詳細化学反応計算・解析用コンピューターのバージョンアップに充当する。
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