研究課題/領域番号 |
23510113
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
大澤 敏 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (50259636)
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研究分担者 |
尾関 健二 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (40410287)
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キーワード | 環境浄化材料 / バイオレメディエーション / 生分解性高分子 / キトサンナノファイバー / 麹菌 / ホルムアルデヒド / 複合材料 |
研究概要 |
麹菌とキトサンナノファイバーまたは生分解性高分子多孔質体を複合化した微生物/生分解性高分子複合体によるホルムアルデヒド、蟻酸、THF、アクリルアミド等の分解能を確認し、その分解能の持続性を高めるため、複合体に麹菌の培地成分を混練した。その結果、麹菌により多孔質体が分解されるとともに培地すなわち麹菌の栄養源が供給され、たとえばホルムアルデヒドやアクリルアミドでは、200ppm濃度の50mL溶液を10mgの複合体で8回以上繰り返し0ppmに浄化する能力を確認することができた。また、持続可能な日数は100日を超え、実用に供しても問題ない程度の複合物が得られた。 しかしながら、たとえばキトサンナノファイバー多孔質体の耐水形状維持性が長時間保持できない問題点が生じたため、これをコハク酸で架橋して、形状異時性を向上させ、それらの多孔質体を用いて浄化実験を続けたところ、100日以上の形状維持性がみとめられ現在その実験を継続している。 一方、麹菌の化学物質耐性試験を重ねたところ、アクリルアミド、ホルムアルデヒドともに高い耐性菌が得られた、これにより、500ppm以上の高濃度の有害物質廃液の処理が可能となった。 これらの複合物は気相においても効果を発揮した。先ず、複合体に含まれるキトサンのホルムアルデヒド気体の吸着測定を行ったところ、水系と同等であった。この他にもシクロデキストリンを導入した濾紙、キトサンナノファイバーフィルム、DNA複合フィルムにおいても良好な結果が得られた。気相の吸着と分解は再現性乏しい面があり、現在、再現性の高い実験系を開発している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は、本研究の目的である微生物/生分解性高分子の複合化による吸着と分解をハイブリッド化させることであり、その点において、十分な成果が得られている。また、24年度以降は気相の吸着分解に主眼を当初置く計画であり、その予備的な実験に進んでいる。いかに吸着・分解能を評価するかが課題であり、密閉系で一定濃度の気体を発生させるシステムの開発を行っている。このシステムが確立されれば、おおむね本研究の目的を達成できる。その方法として、ガス検知管をもちいる簡易的な方法、一定濃度の有害物質のガスを発生させてそれをGC-MSで定量分析する後方で検討を進めている。 また、複合体は気相でも有害物質を吸着するが、麹菌が気相で分解能を発揮するかどうかがカギとなる。一定の湿度であれば、酵素が働き、有害物質を分解できると考えている。固体培地上で、麹菌の有害物質分解評価、および耐性評価は4月から行っており、最終年度中の見通しが立っている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、①複合物の気相における有害物質の吸着・分解、②麹菌の気相における有害物質の分解、の2点について検討する。 ①については、平成24年度に作製した種々の複合物に対して、ガス検知管をもちいる簡易的な方法、一定濃度の有害物質のガスを発生させてそれをGC-MSで定量分析する後方でその吸着分解評価を進める。 ②については、麹菌が気相で分解能する条件、たとえば、温度、湿度、有害物質の濃度を検討する。さらに固体培地上で、麹菌の有害物質耐性評価を行い、高濃度の有害物質の気体に対する分解能の向上を図る。 さらに、①,②について気相における分解の耐久性についても24年度の成果を踏まえて、栄養源の供給により向上させる。数か月程度の持続性を目標に、実用に耐える素材の完成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、①気相中で安定な濃度の気体有害物質を発生させる装置の開発(既存の方法を適用)②ガス発生装置内での有害物質の吸着定量評価をガス検知管およびGC-MSで行う。③麹菌の有害物質耐性をガス発生装置内で、固相培養法により行う。④濃度、湿度、温度を可変して分解能を評価する。⑤有害物質吸着分解複合物の分解持続性を向上させるために、複合物に麹金の栄養源を供給する。 以上の⑤項目に対して、ガス発生装置の作製に必要なガラス機器、ガス検知管、GC-MS用のカラム、麹菌の培地等の消耗品が研究経費の主要な部分である。
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