研究課題/領域番号 |
23510114
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
緒方 安伸 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教育研究支援者 (40509717)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 窒化鉄 / 配向制御 |
研究概要 |
高飽和磁化窒化鉄磁石実現を念頭に、窒化鉄(Fe16N2)単相合成プロセスならびにFe16N2粒子からなる高配向集合体実現を目的として一連の検討を行った結果、以下の研究成果を得た。 種々の検討の結果、3種類の「飽和磁化を低減させる相」が存在することが明らかとなった。第1は、未窒化相(Fe)と過窒化相(Fe4N)等の不適正な合成条件設定により生成する相である。第2は、窒化後において酸素含有雰囲気との接触により生成する表面酸化相である。第1および第2の相の検出・同定にはメスバウアー分光が有効であることが判明した。第1の相を低減するために、合成条件の詳細な最適化を行った。また第2の相の低減のために、低酸素濃度に維持されたグローブボックスを直結した合成装置を新たに設計・設置し、これにより処理する合成方法を検討した。以上の検討により、7テスラにおいて233emu/gの磁化を有し高生成率でFe16N2窒化鉄粒子を合成することに成功した。 但しこの磁化の値は低温で高磁場を印加した時に得られるものであり、室温・低磁場での値は低下する傾向が認められる。このことから、第3の相(「相」と言えるか現時点では不明)の存在が示唆されている。その相は、粒子表面あるいは粒界に存在し、磁気的結合がバルク中の原子に比較して弱い原子の集合体ではないかと推定しているが、その明確な同定と低減検討に現在取り組んでいる。 また、以上の検討で得られた粒子を用いて結晶c軸が配向した集合体の形成検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一連の合成・評価プロセスを不活性ガス雰囲気下で行うことで、試料中の「飽和磁化を低減させる相」の体積割合を低減することが可能となり、結果として準安定窒化鉄相ほぼ単相の窒化鉄ナノ粒子を得ることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに得られた窒化鉄ナノ粒子を用いて、粒径微細化技術や窒化鉄相の磁気特性の温度特性評価技術の構築を通して、熱安定性向上指針の獲得を図る。 次年度使用額は、原材料費の節約等で今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、合成に用いる出発原料、高純度ガス類、および、試薬類について、年度当初の現有量を必要最小限、かつ、効率的に用いることで試料作製には十分であったたため、これらに係る消耗品費を大幅に節約できた。上記の理由により、未使用額が発生している。次年度使用額は、上記のように今年度の研究を効率的に推進したことに伴ない発生した未使用額を含んでおり、次年度請求額とあわせ、加速度的に研究を推進するため、窒化鉄ナノ粒子合成のためのプロセスガスや評価技術に用いる実験器具類など主に消耗品費として研究費を使用する。また、構造評価に関して専門的かつ高度な分析技術を必要とする場合、積極的に外注分析を行うための費用としても研究費を使用する。さらに、磁石材料、および、ナノ材料合成、構造・物性評価関連技術をテーマとした研究会や国内学会に出席し、情報収集を行う。
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