前年度までに、所望の窒化鉄相を得るための還元・窒化プロセス手法の検討、ならびに、原材料粒径の最適化を行い、高生成率で所望の窒化鉄相を得ることに成功している。今年度、個々の窒化鉄粒子の結晶軸を配向させた集合体の実現を念頭に、集合体形成プロセスの検討を行った結果、以下の研究成果を得た。 窒化鉄粉末と接着剤を適量混合し、室温で14kOeの外部磁場中で約10分間静置した後、その外部磁場に平行方向と垂直方向に対する磁化曲線を得た。二つの磁化曲線を比較した結果、外部磁場に平行な磁化曲線における残留磁化は垂直の場合に比べ大きいことが分かった。また、保磁力は2kOe程度で平行と垂直の場合で差異は認められなかった。一方、窒化前の鉄粉末を用いて同様の実験を行った結果、外部磁場に平行と垂直の場合の残留磁化および保磁力は窒化鉄粉末と同様の振る舞いが観測された。これらの結果から、窒化鉄粉末集合体では、形成プロセス中に外部磁場方向に個々の窒化鉄粉末の結晶c軸が揃うばかりでなく、複数の窒化鉄粉末が静磁気エネルギーを低減するように、集合ナノ組織が大きく影響を受けていることが推察される。今後、結晶c軸を配向させた集合体の実現をするためにはナノ組織制御が重要となり、窒化鉄粉末の表面処理や集合体の母材となる材料の最適化、ならびに、粉末間で働く磁気双極子相互作用を決める窒化鉄粉末の充填率制御が鍵を握ると考えられる。
|