本研究課題は,双性イオン型配位子と種々の金属イオンを用いて無機・有機ハイブリッドナノクラスターを合成し,合成したクラスターに関して結晶構造・溶液内構造や電気化学的性質、分光学的性質を調べる。これらの知見より多電子レドックス系における配位子-金属イオン間や金属間の電子的な相互作用について検討を行う。さらに、より複雑な多電子系レドックスを示す新規な双性イオン型配位子を開発し、ナノマテリアルとしての機能性についての評価を試みる事を目的とした研究である。 今年度は,新たな置換基をもつ分子内塩の合成を試み,その錯体について合成法を探り、配位子とするために大きいスケール(1 g程度)で合成できるかを調べた。錯体の合成方法については前年度で得られた金、銀錯体の合成方法を参考に行い,その他の金属との錯形成についても検討を行った。得られた錯体について,いくつかの錯体は単結晶を得て構造解析を行い、様々な機器測定により溶液内構造や電子状態を明らかにすることができた。 また,各種の分光学・電気化学的測定により、電子状態を明らかにするとともに,溶液内と固体でのサイクリックボルタンメトリーから、酸化還元特性を明らかにし、電解生成物の紫外可視吸収の測定などを行い、溶存状態の構造についても考察した。また、ナノマテリアルとしての機能性の検討、量子化学計算なども行った。得られた知見については学会発表及び,論文発表を行った。
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