研究課題/領域番号 |
23510118
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
富岡 明宏 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (10211400)
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キーワード | メゾスコピック構造 / 準安定 / 溶液プロセス / 脱濡れ過程 / 液相レーザーアブレーション |
研究概要 |
これまでの研究で、π共役分子を用いて自己組織的会合体を形成させる手法を開発し、溶媒の蒸発に伴う急速な分子集積を利用する脱濡れ法により準安定な会合体を作製できること、特にローダミン類縁色素会合体では例外的に高い発光性が達成できることを明らかにしてきた。今年度は、熱酸化法により均一な厚さの表面SiO2層をつけたSi基板の場合には、大面積にわたって凝集のない均一なサイズの色素会合体を作製できることを明らかにした。これは発光・表示デバイス応用に向けて、本研究の色素会合体配列が有用であることを示す重要な知見である。 また、可視光レーザでπ共役分子を共鳴励起し、やはり急激な溶媒の蒸発を起こさせて不溶溶媒中での急速な分子集積を起こさせ、新規な分子状態を探索する液滴レーザプロセシング法を提案・開発した。紫外レーザを用いる従来のレーザプロセシング法では、化学結合が切断、分子が破壊され、有機材料の機能が失われるため、有機分子材料に適用することは困難である。不溶溶媒中に懸濁した、有機分子材料溶液の微小液滴をレーザ照射ターゲットとする液滴レーザプロセシング法は、熱的過程でありながら分子破壊を抑制し、同時に物理状態を転移させる、例えば今の場合発光を短波長化させることに成功し、新材料開発の強力な手法となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱濡れ法により高発光性の会合体を作製する研究では、Si基板表面の親水性を決定する表面SiO2層の厚さを変化させ、親水性の変化と、脱濡れ過程により生成するローダミン色素会合体の発光性との関係を調査した。熱酸化法で厚いSiO2層を成長させるには長い時間を要するので、今年度はゾルゲル法を用いて様々な濃度のSiO2前駆体をスピンコートし、900oCで焼結することにより、簡便に様々な厚さの表面SiO2層をもつSi基板を作製して、その上に生成する脱濡れ会合体の発光性を比較した。 表面SiO2層の厚さが30nm以上の場合には、これまでのガラス基板の場合と同様発光性の高い会合体が生成したのに対し、SiO2自然酸化膜(厚さ2nm程度)の場合には消光状態となることが確認できた。だがゾルゲル法を用いた場合には、SiO2層の何かが不均一なため、大面積にわたって均一なサイズの会合体を基板上に分散させることはできなかった。 液滴レーザプロセシングの実験結果に一部問題点があることが見つかった。溶媒をクロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、トルエンと変えたところ、ジクロロメタンの場合だけ特異な結果が得られるとしていたが、その効果の一部はジクロロメタンの光分解物に起因する事が判明した。インタクトな新しいジクロロメタン溶媒を用いて再実験したところ、定性的には同様な結果が得られ、実験結果の解釈を変更する必要はないことが判った。
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今後の研究の推進方策 |
脱濡れ法により高発光性の会合体を作製する研究では、Si基板表面の特定領域に(自然酸化膜以上の厚さの)SiO2層をパターニングし、その領域のみに高発光性会合体を形成させる試みに挑戦したい。また元々高発光性J会合体を生成する性質のある擬シアニン色素を用いて脱濡れ法で会合体を作製すると、どのような性質の会合体が生成するのかも確認したい。 液滴レーザプロセシングに関しては、発光の短波長化を引き起こしている電子準位の変化を追跡するため、MEHPPVナノ微粒子のHOMOレベル・LUMOレベルのエネルギー変化を測定したい。フレンケル励起子系では量子サイズ効果は起こらないはずだから、初期溶液濃度を変えてナノ微粒子サイズ(現在得られているのは200nm径)を変化させたとき、HOMOレベル・LUMOレベルのエネルギーが変化しないかどうかも確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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