研究課題/領域番号 |
23510120
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
池本 弘之 富山大学, 富山大学大学院理工学研究部(理学), 教授 (20262496)
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研究分担者 |
宮永 崇史 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70209922)
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
中村 和磨 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60525236)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 階層性 / XAFS / 光音響分光 |
研究概要 |
Teナノ粒子は、サイズが小さくなるにつれて鎖間相互作用が減少し、基本構造であるTe鎖同士の配置に乱れが生じる。すなわち、アモルファス化していると考えている。一般的にアモルファスは温度が高いとアニールされて結晶化する。そこで、我々は液体窒素温度でナノ粒子を作製し、温度を保ったままXAFS測定することを進めている。2011年度は、その場蒸着・XAFS測定装置を製作し、放射光施設で初めての実験を行った。Teナノ粒子に関しては真空ポンプの不調により実験できなかったが、Teナノ粒子と同様に階層性を有するBiナノ粒子では実験が出来た。液体窒素温度でのその場蒸着・XAFS測定により、アモルファス成分が大きくなる結果をえた。 Teナノ粒子の光学定数を導出するために、光音響分光(PAS)測定を計画している。導入するPAS装置を検討するために、2種類のPAS検出器でのデモ測定を行った。予備的な測定では、ナノ粒子化に伴ってバンドギャップが開いていく傾向が見られた。 密度汎関数理論に基づく第一原理分子動力学法を用いて研究を行うため、その準備として擬ポテンシャルの構築を行った。主にTeが目的の元素であるが、これと併せて階層的構造をもつと考えられるクラスターとして興味深い元素であるSeおよびBiについてのポテンシャルも構築した。Biクラスターについては第一原理分子動力学の計算を開始した。 「大規模並列計算機システム用RPA遮蔽クーロン相互作用計算コード」を、有限周波数および金属系に対しても適用可能なものに拡張した。これにより、これまで提示してきた有効模型の相互作用項において、静的なものだけでなく、動的なものも計算可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
液体窒素温度でのTeナノ粒子作製・XAFS測定装置を製作し、予備実験を行うことが出来た。光学測定のための光音響分光測定は、予備的な測定を行い、光学ギャップが開くことを部分的に得た。
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今後の研究の推進方策 |
Te鎖の鎖内共有結合の伸縮モード(140cm-1)から、Teナノ粒子における鎖状分子の伸縮の力定数を求め、EXAFSのEinsteinモデル解析の結果を確定する。機器分析センターのレーザーラマン分光計(日本分光NRS7100)でのRaman測定により、伸縮モードが高波数側へのシフトを定量的に議論する。 Teでは、二面角の符号並びによる鎖内の中距離構造や鎖間相関による階層構造が、ラマンスペクトルの100 cm-1以下の領域に強く反映される。第一原理計算から求めたパラメータを用いて、現象論的なモデルでRaman スペクトルを計算し、実験結果と比較検討する。実験と理論の両面からの検討により、Te鎖の折れ曲がりや、相互配置を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度の光音響分光のデモ測定結果を検討し、光音響分光セルを導入する。 高エネルギー加速器研究機構に出張して、Teナノ粒子のその場試料作製・測定を行う。2011年度の実験を検討して、装置の改良を行う。この実験により、Teナノ粒子の特徴がより明確に現れると考えている。
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