研究課題/領域番号 |
23510123
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
上原 伸夫 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50203469)
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キーワード | 金ナノ粒子 / 熱応答性高分子 / センサー / プローブ |
研究概要 |
本研究は「熱応答性高分子を被覆した金ナノ粒子の融合現象」に関してその原理を化学的に解明し,さらにその原理に基づいて生体関連分子の計測プローブの開発を目指すものである。この融合現象自身は申請者らにより見出されたものであり,ナノサイエンスの新領域を拓くことが期待される。当然のことながら,この原理に基づいて設計,開発されたナノプローブには,これまでにない機能の発現が期待される。 本研究の目的を遂行するにあたり,平成24年度は,23年度に引き続きナノ粒子の融合現象についての検討と高感度ナノプローブの創製について検討した。ナノ粒子の融合現象については,連携研究者である千葉大学大学院融合科学研究科森田剛助教が小角X線散乱法と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて主導的に研究を行った。 融合現象の解明については,千葉大学大学院融合科学研究科森田剛助教との共同研究により,以下の成果を得た。TEM観察の結果,高分子の融合に関する詳細な成長過程が明らかとなった。熱応答性高分子の相転移により金ナノ粒子の凝集が生じ,次いで凝集した粒子の融合が進む。またこれとは別に,チオール化合物の添加により金ナノ粒子の融合が阻害されることを見出した。これはチオール基を介してチオール化合物が結合することで,ナノ粒子同士の直接の接触が阻害されることによる。この際,システインを添加することにより,370 nmに新たなプラズモン共鳴バンドが出現することを見出した。このバンドはこれまで知られていない。 高感度ナノプローブについては,熱応答性高分子にビオチン基を結合したものを合成し,金ナノ粒子に複合化することでモデルとなるプローブを作製した。このプローブはアビジンの添加により,相転移が抑制される。この際,相転移に伴う溶液の透過率の変化を出力とすることで,数百 n mol/L レベルのアビジンを計測することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
森田剛助教の精力的な研究により,金ナノ粒子の融合現象についてはほぼ解明することができた。また,当初の計画通りに高お感度ナノプローブについてプロトタイプを作成することができた。上述したように,この際,チオール化合物の添加効果を検討していたところ,システインの添加により新たな吸収バンドが発現することを発見した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,研究の最終年度にあたる25年度は開発したプロトタイプの免疫センサーを高感度化することを検討する。また,24年度に見出したシステイン添加に伴う金ナノ粒子の新しいプラズモンバンドの出現についても詳細に検討する。これに加え,ガラス基板上に固定化したセンシング部位に金ナノ粒子を捕捉させるセンサープレートを構築する。 上記の研究に平行して,25年度は研究成果のまとめと発表に注力する
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次年度の研究費の使用計画 |
既に,備品については24年度まに導入が完了しているので,25年度は主に消耗品の購入と成果発表のための旅費および研究を精力的に進めるための謝金に研究費を使用する。
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