研究課題/領域番号 |
23510127
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
末 信一朗 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90206376)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオデバイス / ナノデバイス / バイオセンサ |
研究概要 |
高効率なバイオ電池用電極の構築を目指し、まず電極の電子授受の効率化を検討した。マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)にポリエチレンイミン(PEI)を複合体化させ正電荷を与えたMWCNT-PEIとL-プロリン脱水素酵素(L-proDH)を交互積層法を利用して炭素電極の表面に修飾し、種々の検討を行った。まず、最適積層数の検討として、10, 15, 20, 25, 30層の積層電極を作製し、それぞれのフェロセンカルボン酸に対する電流応答性を測定したところ、20層の積層電極が最も高感度であり、未修飾の電極の約235倍の電流応答性を有することがわかった。次に、この20層の積層電極について検出限界を検討したところ、10 pmolのフェロセンカルボン酸を検出可能であり、さらに10-90 pmolの間で電子授受が可能であることがわかった。また、長期安定性について検討を行ったところ、作製から12週間後の測定において作製当初の76.8%の電流応答を維持し、24週間後においても68.8%の電流応答を維持することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.位置制御に適した生体触媒の遺伝子レベルでの創成 色素依存型L-プロリン酸脱水素酵素(4量体)についても取り上げ、酵素反応に関わる補因子がMWCNTと円滑に直接電子授受を行うように遺伝子レベルでの分子改変を行った。4量体酵素にはすでに各サブユニットのN末端側へのヒスチンジンタグの導入方法が確立されており分子配向性の検討が可能となった。2. MWCNT修飾電極の設計と基本特性PEIを修飾したMWCNTを分散させ、これを電極基盤上に固定化する。CNT上への酵素の固定化方法としては、交互積層法をはじめ共有結合法などを検討した。また最適な反応場形成のためにMWCNTの前処理方法についても検討した。評価には、通常のサイボリックボルタムメトリー法により電極応答性および自己電子伝達能を評価した。電極上にMWCNT/メディエータ/酵素のコンソーシアムを形成した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 生体触媒素子の配向固定化法生体触媒素子としてグルコース脱水素酵素を取り上げ、これの変異導入点を決定した後はCNTへの配向固定化のために導入するためにリシン、システイン残基などに置換し酵素活性への影響を検討する。次にCNTへの配向固定に関して、直接官能基を介した共有結合や金コロイドナノ粒子を介する結合方法などを検討して、最適なCNT酵素複合体の知見をまとめる。2. バイオデバイスの構築と評価基板上に高分子化補酵素を含めた、電子伝達場を提供できるように、電極基板表面をCNT 酵素複合体と高分子化補酵素で被覆修飾する方法を開発する。一般的に用いられている物理的な吸着法以外に、我々が知見を集積している交互積層法をあわせて検討する。CN-補酵素-酵素間の直接的な電子伝達場が形成されれば、脱水素酵素反に伴う電子伝達の効率の上昇が期待される。ここでは、基板となる炭素電極を電解酸化することによってカルボキシル基を導入、その上に、交互積層法を用いてCNT酵素複合体、高分子化補酵素などを順次積層する。各化合物の積層の順序や積層条件などを詳細に検討する。積層の状態の確認は水晶発振子を基板として同様の積層を行い、水晶発振子の出力によって現有のQCM装置で評価する他、ITO電極を基板として積層を重ね電極の吸収スペクトルの変化やエレクトロクローミックなどで評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は最終年度となるので、備品費は計上せず、研究遂行に必要な消耗品費や研究成果発表旅費を挙げる。また、海外研究協力者である天津工業大学 鄭副教授との研究打ち合わせ旅費を特に計上する。
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