今後の研究の推進方策 |
構造転移に基づくスイッチング制御を目指して機能化を果たす。具体的には、水素イオン結合(pH)で誘起される構造変化や構造形成、金属、蛍光物質、およびタンパク質への特異的結合能を付与することを行う。このために、pHで荷電状態が変化するアミノ酸(His, Asp, Gluを利用)を複数配置し、中性溶液中では正電荷を持つアミノ酸(LysまたはArg)との静電的引力によってフラーレン様構造を保持するが、酸性では静電相互作用の反発により可逆的に壊れる分子を設計する。 次に結合部位の立体構造を保持させたタンパク質分子をデザインすることで、金属との結合を起こす結合型機能を織り込んだものへ発展させる。この際、自然界で金属結合するタンパク質では、His, Cys, Glu, Aspの4種類の側鎖が相互作用していることが知られている。そこで、決定した立体構造をもとに、空間的に最適配置で金属と相互作用するようにこれらのアミノ酸側鎖を導入する。また、芳香族環を有する蛍光物質を取り込むために、ケージ構造内部の疎水性と芳香族アミノ酸(Trp, Tyr, Phe)の配置を工夫する。蛍光物質は検出が容易であり、また薬剤と構造が比較的近いものも多いため、ドラッグデリバリーなどへの適用化を確認することが可能となる。さらに、小型のタンパク質を取り込めるように、内径と形状を制御する。 続いて、1つの分子ではなく集合体とすることで、構造安定性、協同性、および多種多様な相互作用を導入する。中央の空隙に上記金属結合性のアミノ酸を導入すべく、近隣のアミノ酸の大きさや疎水性を考慮して設計する。また、αヘリックスは構造形成のフォールディング速度が速いため、高速高感度の構造スイッチングが可能となる。
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