昨年度の研究においては、様々な分析手法を用い総合的に検討することで、トリフルオロメチル基を有する芳香族ポリアミドナノファイバー構造体の形成メカニズムや形成後の時間変化に伴う構造および特性変化を明らかにすることができた。 これらの結果を踏まえ、本年度は最適化した反応条件でナノファイバー構造体を作製し、様々な温度における熱処理効果や温度変化に伴う構造変化について検討を行った。その結果、得られた構造体は見かけ上融点を示さず、炭化後もファイバーの形状を保持していることが明らかとなった。また、温度上昇、特に高温域で、分子構造や結晶化度の顕著な変化が見られたことから、転移が生じているものと考えられる。この転移により、材料の力学的強度の大きな減少が予想されることから、転移挙動および温度の解明はナノファイバー構造体の応用および実用化において非常に重要な知見となる。また、温度変化に伴う構造変化の詳細を明らかにすることで、構造と熱特性に関する詳細な相関も把握でき、今後の材料設計に活用できるものと考えられる。 さらに、本年度はナノファイバー構造体の機能化を目指し、共重合化などによる官能基の導入も試みた。昨年度に解明したナノファイバーの形成メカニズムも踏まえながら反応条件の検討を行うことで、高機能化ファイバーの形成ファクターも一部明らかにすることができた。今後はこれらの結果も活用することで、高機能かつ新規なファイバー構造体の開発が期待できる。
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