銀と酸化アルミニウムを積層させた薄膜干渉基板を用いると蛍光を強く観察することができる。このため、薄膜干渉基板はタンパク質の検出などへの応用が期待できる。しかし、薄膜干渉基板では励起光が強く反射するために背景光が高くなり、特に低濃度の蛍光検出では背景光が問題となる。そこで、本研究では薄膜干渉基板での蛍光と背景光の偏光に着目して、タンパク質の高感度検出を試みた。 実験の結果、薄膜干渉基板での蛍光増強は励起光の偏光に強く依存しTE偏光の励起光によって蛍光は強く増強された。一方でこのとき増強された蛍光は無偏光であり、背景光となる基板で反射した励起光はTE偏光を維持していた。この結果より、TE偏光した光を励起光源として利用し、これと直交する偏光の蛍光を検出する光学装置を開発することとした。この装置を用いることで、背景光の弱い、高感度なタンパク質の検出が可能になると考えた。 この装置を用いて蛍光検出を行ったところ、背景光は通常のガラス基板と蛍光検出装置を用いた場合に比較し1/8倍に減少した。一方で、薄膜干渉基板による蛍光増強効果により蛍光は13倍増強した。これらを合わせて考えると蛍光のS/N比は100倍向上したことがわかった。また、これらの結果を踏まえて、蛍光標識したタンパク質の検出を行った。具体的には、ビオチンを薄膜干渉基板に固定化し、Cy3標識のストレプトアビジンの検出を行った。この結果、ガラス基板の場合と比較しS/N比は約25倍向上した。
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