平成25年度には,前年度に得られた結果を基づいて,内部に巨大ベシクル(GV)を保持する巨大ベシクル(オリゴベシキュラーベシクル(OVV))を用いた次世代人工細胞コンセプトモデルの構築を試み,その過程で本システムの可能性と問題点とを明らかにした.マイクロ化学システムとしての挙動を解析するため,電気生理的手法の導入を検討した.また,OVV形成誘起条件の最適化と機構の解明,およびOVVの修飾・機能化方法の検討に関しては,エレクトロフォーメーション条件の最適化により従来よりもサイズの大きいGVの形成できることを明らかにし,卵細胞に匹敵する大きさの人工細胞を得る可能性を示した.さらに従来よりも大きな膜構造体に対する物理的マイクロマニピュレーションを利用したOVV形成の検討,GVのマイクロマニピュレーションへの微小電極の利用の検討,GVの迅速形成現象における膜構造体成長と膜融合との関係に関する解析などをおこなった. 期間全体の研究により,「細胞類似型マイクロ化学システム」(人工細胞)の高度化に必須である細胞内小器官に相当するサブシステムを有する従来にない次世代人工細胞膜モデルとしてOVVを用いるにあたり,最も大きな課題であるOVV形成の確実性を従来よりも高める事に成功した.また,機能化においてもサブシステムの基盤となる内部GVを多数,確実に形成することが可能となる条件について有用な知見を得る事ができた.これにより,OVVを基盤として用いた,複数の内部サブシステムを持つ,より高度な細胞類似型マイクロ化学システムへの将来的な展開の可能性を示した.
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