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2011 年度 実施状況報告書

高分子ゲルを用いた微小電気化学ポンプの開発

研究課題

研究課題/領域番号 23510145
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

高田 主岳  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20361644)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード微小ポンプ / 電気化学ポンプ / アクチュエータ / 高分子ゲル / エネルギー変換素子 / 酸化還元
研究概要

銅イオンを内包したポリアクリル酸ゲルを用いた、微小電気化学ゲルポンプの基礎的特性評価を行った。ポンプ内の銅イオンを定電位および定電流電解により酸化還元した際の、ゲルの膨潤収縮にともなうポンプの排水・吸水特性を明らかにした。ゲルに還元電位(-1.3 V vs. Ag/AgCl)を印加したところ、金管(シリンダ)内のゲル(ピストン)は膨潤し、ポンプは水を排出した。一方、酸化電位(+0.6 V)を印加したところ、ゲルは収縮し、水を吸入した。同様に、電流密度を-4.4 uA/cm2として定電流還元したところ、ゲルは収縮し、水を排出した。電流密度を+4.4 uA/cm2とした酸化では、ゲルは膨潤し、水を排出した。定電位および定電流電解のどちらにおいても、水の吸排出量は消費した電気量にほぼ比例した。しかし、電解開始直後では反応が起こっているにも拘わらず、排出あるいは吸入は起こらなかった。これは金管との摩擦に打ち勝ってゲルが膨潤および収縮するには、過剰のエネルギーが必要なためと考えられた。 本研究の微小電気化学ゲルポンプの実用化を目指すためには、吸排出量を電気量で制御できることが望ましい。そこで金管とゲルとの摩擦を軽減し、動作初期における動作の改善を試みた。摩擦を軽減するために、金管内を3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸で修飾した。この分子はスルホン酸基を有するため負の電荷を持つ。ポリアクリル酸ゲルも負の電荷を持つため、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸と静電的に反発し、ゲルの膨潤収縮が起こり易くなると考えられた。実際にこの分子で修飾したポンプでは、還元電位印加直後から排水を始め、その量は電気量に比例することが示された。 金管内のゲルにおける銅イオンの分布を原子吸光法により評価した。硝酸銅水溶液を接触させた側に近いほど、ゲル内の銅イオン濃度は高いことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

微小電気化学ポンプの基礎特性評価のうち、印加電位および印加電流とゲルの膨潤収縮挙動との関係の評価は、ほぼ計画通り進行した。その評価に基づき、次年度以降に計画していた化学修飾によるゲル(ピストン)と金管(シリンダ)との摩擦の軽減を行った。その結果、期待通りの結果が示され、ポンプ動作初期における消費した電気量と吸排水量の不一致が解消された。これによりポンプ動作のほぼ全体に渡り吸排水量を電気量で制御できるようになり、研究が大きく進んだ。 一方、ゲル内における銅イオンの分布と膨潤収縮挙動との関係の評価では、ゲルのサイズが微小なためそこに含まれる銅イオンの絶対量が少なく、再現性よく定量することが困難であった。今後、銅イオンの分布を定量する場合に限り系をスケールアップし、測定の精度や再現性を改善する予定である。

今後の研究の推進方策

ゲル内における銅イオンの分布と膨潤収縮挙動との関係を評価する。前述した様に、ゲル内の銅イオンの分布をスケールアップした系で評価する。また、初期状態における銅イオンの分布が膨潤収縮挙動に与える影響を評価する。 これと平行してゲルポンプの流速制御精度の向上を目指す。これまでに、ゲルと金管との摩擦は、金管の化学修飾すにより軽減することができた。これをさらに軽減するために、ゲルの架橋構造自体の検討を行う。高分子ゲルはその架橋密度が均一であるほど膨潤収縮の等方性が高くなると期待される。本研究ではポリアクリル酸ゲルを、便宜上熱重合開始剤を用いたラジカル重合によって行っているが、この方法で合成されるゲルの架橋密度の均一性は高いとは言えない。そのため膨潤収縮時に部分的に体積が不均一となり、シリンダとの摩擦が高くなっている可能性がある。したがってゲルの架橋密度を高めれば動作がスムースとなり、より低電流密度で動作すると考えられる。 架橋密度の均一性を高めるためには、光重合も視野に入れる。光重合では重合開始剤のラジカル化が、熱重合に比べて均一に起こるため、合成されるゲルの架橋密度も均一となる。架橋密度の均一性が高くなれば、ゲルの機械的強度も上昇する。したがってポンプの耐久性や繰り返し特性の向上はもちろんのこと、動作の精度も向上するものと期待される。

次年度の研究費の使用計画

消耗品としてポンプの動作状況を記録するためにデジタルビデオカメラや、ゲルの膨潤方向を制御するための金メッシュ、さらに研究遂行に必要な試薬・ガラス器具などを購入する。 なお、次年度使用額が約38万円となっているが、これは主に、メーカーとの交渉により、予定していたグローブボックスより安価なものを購入できたことで生じたものである。この分は、ゲル内の銅イオンの分布を評価するための光学機器や記録装置の購入に充てる予定である。 研究成果発表や他の研究者との情報交換のために旅費を計上し、その他には複写費や研究成果発表費(論文別冊代)を計上した。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Electrochemical Control of Threshold Value of Molecular Valve Consisting of Poly(acrylic acid) Gel2011

    • 著者名/発表者名
      K. Takada, T. Ohra, K. Takaue, N. Ishikura, C. Kato, and A. Yuchi
    • 雑誌名

      Chemistry Letters

      巻: 40 ページ: 1152-1154

    • DOI

      10.1246/cl.2011.1152

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An electrochemical actuator based on reversible changes in volume of poly(acrylic acid) gel induced by quinone redox2011

    • 著者名/発表者名
      K. Takada, T. Iida, Y. Kawanishi, T. Yasui, and A. Yuchi
    • 雑誌名

      Sensors and Actuators B

      巻: 160 ページ: 1586-1592

    • DOI

      10.1016/j.snb.2011.09.031

    • 査読あり
  • [学会発表] ポリアクリル酸ゲルを両面に被覆した電気化学アクチュエータ2012

    • 著者名/発表者名
      久松直樹、飯田那也、安井孝志、高田主岳、湯地昭夫
    • 学会等名
      電気化学会第79回大会
    • 発表場所
      アクトシティ浜松
    • 年月日
      2012-03-30
  • [学会発表] ポリアクリル酸ゲルを利用した分子バルブの電気化学的な開閉制御2012

    • 著者名/発表者名
      大原哲矢、竹上功起、安井孝志、高田主岳、湯地昭夫
    • 学会等名
      電気化学会第79回大会
    • 発表場所
      アクトシティ浜松
    • 年月日
      2012-03-29
  • [学会発表] ゲルの膨潤収縮を利用した微小電気化学ポンプ2011

    • 著者名/発表者名
      林淳志、山村直希、高田主岳、湯地昭夫
    • 学会等名
      「分析中部・ゆめ21」若手交流会 第11回高山フォーラム
    • 発表場所
      高山市図書館
    • 年月日
      2011-11-12
  • [学会発表] ポリアクリル酸ゲルを用いた電気化学アクチュエータ2011

    • 著者名/発表者名
      久松直樹、飯田那也、高田主岳、湯地昭夫
    • 学会等名
      日本分析化学会第60年会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2011-09-14
  • [学会発表] ポリアクリル酸ゲルを用いた電極分離型分子バルブ2011

    • 著者名/発表者名
      大原哲矢、竹上功起、石倉奈津美、加藤智絵、安井孝志、高田主岳、湯地昭夫
    • 学会等名
      日本分析化学会第60年会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2011-09-14
  • [学会発表] キノン-ポリアクリル酸ゲルを用いた電気化学アクチュエータ2011

    • 著者名/発表者名
      高田主岳、飯田那也、安井孝志、湯地昭夫
    • 学会等名
      2011年電気化学秋季大会
    • 発表場所
      新潟朱鷺メッセ
    • 年月日
      2011-09-10

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公開日: 2013-07-10  

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