研究課題/領域番号 |
23510146
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
武尾 正弘 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40236443)
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研究分担者 |
内海 裕一 兵庫県立大学, 付置研究所, 教授 (80326298)
遊佐 真一 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00301432)
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キーワード | ELISA / マイクロリアクター / ポータブル分析機 / 環境分析 / 食品分析 |
研究概要 |
抗原内包樹脂を用いた新規ポータブルELISA分析機の開発を目的に、内分泌撹乱物質・ノニルフェノールおよび農薬代謝物・ニトロフェノールの分析に対応する抗原内包樹脂を作製し、これをマイクロリアクターに設置し、自動送液検出システムにてこれらの物質の微量定量を試みた。前者については、前年度までに内包樹脂の調製に成功し、競合ELISA法により0.10-0.40microgram/Lの範囲で負の検量線が得られ、このレベルで定量可能であることが示唆されていたが、自動送液検出システムの適用で、分析の変動係数を5%程度まで落とすことに成功した。この分析システムは5台の精密ポンプ、高輝度LED光源、パームトップ分光蛍光光度計、フローセル、マイクロリアクターなどより成るテーブルトップサイズのシステムであったが、ポンプ類をマイクロピエゾポンプへ変更することにより、25cm角のアクリルケースに全システムをコンパクトにまとめることに成功した。また、マイクロリアクターのマイクロフィルター部で送液を正確に止める(再現性のある反応のため)ため、光液面センサーを設置し、液面到達時に送液を止めるシステムを新たに加えた。さらに、このシステムにブルーツースモジュールを加えて、外部タブレットPCから入力したプログラムに従って、無線で送液制御することにも成功した。 一方、農薬代謝物・ニトロフェノールの分析に対応する抗原内包樹脂の調製で、ニトロフェニル基内包樹脂フィルターを作製したが、ブロッキング操作で官能基が埋まり、抗原抗体反応に寄与できない問題があった。そこで、高分子主鎖とニトロフェニル基の間に親水性あるいは疎水性のスペーサー分子をかましたが、それらの効果が認められず、抗原抗体反応による蛍光の検出には至らなかった。従って、まずは、上記の小型化したシステムでのノニルフェノールの分析の評価を継続して行うことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度までに、分析対象とした2つの物質のうち、内分泌撹乱物質・ノニルフェノールについては、抗原内包樹脂を用いた新規競合ELISA法で微量定量できる原理検証に成功している。もう一方の農薬代謝物であるニトロフェノールについては、有効な抗原内包樹脂の調製に成功しておらず問題は残っているが、自動化に伴う分析精度の大幅な向上が得られ、さらに、実ポータブル検出器を目指したシステムの小型化に成功した。また、WindowsタブレットPCで作動する専用の操作プログラムの作成や無線化にも成功し、25cm角のシステムを用いて、分析条件の最適化(総分析時間の短縮のため、抗原抗体時間や標識酵素の反応時間の検討)を進めることができるようになった(以前は、手分析による送液や測定、繰り返し分析のためのフィルターの交換等のため、多大な時間を要した。夜間連続運転も可能となった)。このようなことから、当初計画以上に実用化に近い段階にきたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
25cm角の小型システムを用いて、送液実験を行い、問題なく繰り返し分析が可能か検討を進める。また、繰り返し自動分析による分析精度の検討、分析時間の短縮化のため、抗原抗体反応時間及び標識酵素の反応時間の最適化を行う。また、この分析システムの高輝度LED光源やパームトップ分光蛍光光度計は、製品をそのまま使っているため、電源の共有化や外部パッケージの除去による小型化を実施する。 一方、抗原内包樹脂は抗原を樹脂の高分子主鎖へ導入するため、抗原によってはそのような樹脂の合成が困難な場合もあり、抗原を高分子樹脂に混合するだけのもので同効果が得られるか検討する。さらに、フィルター作製には放射光を活用しているが、現状の細孔サイズのフィルターは他の方法でも作製可能と考えられるので、安価な代替法を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費(樹脂材料、コネクター、電子部品など)35万、外国旅費30万(MNE2013で参加発表)、論文出版費用5万を見込んでいる。
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