研究課題/領域番号 |
23510166
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
安藤 和敏 静岡大学, 工学部, 准教授 (00312819)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / OR / アルゴリズム / 組合せ最適化 / 離散数学 |
研究概要 |
「研究実施計画」に記載した平成23年度中に行う研究は、(1) 最小費用全域木ゲームのShapley 値を厳密に計算するアルゴリズムの開発と実装;(2) 任意の費用関数の超距離/木距離による近似についてのサーベイ;(3) Shapley 値の近似アルゴリズムの検証、の3項目である。(1)については、このアルゴリズムをコンピュータプログラムとして実装し、その計算量を実験的に検証した。その結果、計算量はほぼ理論値の計算効率性を持つことが観察された。このアルゴリズムは、それまでに知られていたShapley値が厳密に計算できる最小費用全域木ゲームのクラスを拡大したという意味で重要な意義を持つ。(2)については、費用関数の超距離/木距離による近似値を得るアルゴリズムで代表的なものである、準優位超距離、Buneman Construction及びNeighbor Joiningについて、近似値及びその計算アルゴリズムについてのサーベイを行った。 費用関数の超距離/木距離による近似は、(3)のShapley 値の近似アルゴリズムにおいて用いられる。(3)の近似アルゴリズムは,与えられた費用関数を, 超距離あるいは木距離で近似し、近似された費用関数に関連する最小費用全域木ゲームの Shapley 値を厳密に計算し, それを元の費用関数に関連する最小費用全域木ゲームの Shapley 値の近似値とするものである。このアルゴリズムをコンピュータプログラムへの実装し近似精度についての実験的評価を行った。その結果、Neighbor Joiningアルゴリズムによって生成された木距離を用いるShapley値の近似値が最も誤差が小さいということが観察された。最小費用全域木ゲームのShapley値の近似に対する新しいアルゴリズムを提案したということは重要な貢献であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実施計画」に記載した平成23年度中に行う研究は、(1) 最小費用全域木ゲームのShapley 値を厳密に計算するアルゴリズムの開発と実装;(2) 任意の費用関数の超距離/木距離による近似についてのサーベイ;(3) Shapley 値の近似アルゴリズムの検証、3項目である。これら3項目の全てについて、ほぼ計画通りに研究を実施した。しかしながら、(3)の近似アルゴリズムの精度の検証については大雑把な観察しか行われておらず、近似アルゴリズムをより実用的にするためには、近似誤差に関するより詳細な分析が急務である。また、ほぼ計画通りの研究成果は得られているものの、それらの研究成果の発表については遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
与えられた任意の費用関数を、準優位超距離、Neighbor Joiningアルゴリズムによって生成された木距離、及び、Buneman木によって生成された木距離の3つ、によって近似し、これらの近似された費用関数を用いて、Shapley値の近似アルゴリズムの誤差を評価した。その結果、Neighbor Joiningアルゴリズムによって生成された木距離を用いるShapley値の近似値が最も誤差が小さいということが観察された。しかし、入力として与えられる費用関数が木距離から遠ざかるほど、その誤差は大きくなるということが観測された。実際に近似アルゴリズムを使用する際には、誤差の見積もりが必須である。しかしながら、現時点では近似アルゴリズムの誤算の見積もりに関しては大雑把な傾向程度しか分かっていない。今後は、入力として与えられる費用関数がどれだけ木距離から離れているかを示す尺度(Δ-加法性)を用いて、近似アルゴリズムの誤差を評価する実験を行うとともに、Δ-加法性を用いた理論的な誤差を与えることも研究目標としたい。また、これまでの研究によって費用関数の木距離による近似手法として、refined Buneman木というものがあるということが分かった。費用関数に対するこの近似手法を用いたShapley値の近似計算の精度を検証することは、今後の課題の一つである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由の一つは、研究成果を取りまとめるのに遅れが生じたため、H23年度の研究において研究成果を発表するために計上した出張旅費の一部が残額として生じたためである。H24年度には、H23年度に行う予定であった研究発表を行うために、この残額も合わせて出張旅費として使用したい。次年度使用額の生じたもう一つの理由は、数値実験を行うために消耗品費に計上した数理計画ソフトウェアを購入しなかったためである。これは、実際にコーディングを担当した研究協力者のプログラミング能力が高かったために商用のソフトウェアに依存する必要がなかったからである。これについても次年度に繰り越すことにする。上記以外には、H24年度以降に行う数値実験で使用するために、ワークステーションと呼ばれる高性能計算機を購入する。また、既存研究のサーベイの目的のために書籍の購入代金を設備備品日に計上する。
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