研究課題/領域番号 |
23510168
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
白石 陽子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (30551163)
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キーワード | ソーシャルガバナンス / アジア / 安全政策 / セーフコミュニティ / まちづくり / 評価指標 |
研究概要 |
本研究は、前研究(科学研究費(若手研究スタートアップ))の成果を踏まえ、世界レベルで普及している安全なまちづくり活動「セーフコミュニティ(SC)」を対象に、地域で形成されたソーシャルガバナンスの仕組みがコミュニティ与えるインパクトを評価するための指標モデルの構築を目指している。 2013年度は、「①安全状況を示す各種統計等のデータの収集・分析(前年度から継続)」、および「②データ分析をもとに、取組と連動した指標を導き出すための検討」を行った。まず、急搬送データの分析を引き続き行うとともに、新たに児童の受傷(学校で記録している児童の外傷受傷およびその医療費)に関するデータの分析を行っている(現在も継続中)。さらに、既存のデータからは情報を得ることが困難な就学前児童の受傷状況について、乳幼児健診時に保護者から情報が収集できるよう、情報収集の仕組みを設計し、現在、自治体とともに実践に移す準備を進めている。 加えて、質的データの収集・分析については、自治体における取組体制や住民の意識など質的状況を把握するために、SC取組んでいる自治体での各種会議や活動への参与観察及び関係者へのヒアリングを実施し、その内容を取りまとめた。 また、海外の事例について、韓国、台湾、アメリカのSC支援センター及びコミュニティを訪問し、聞き取り調査を行った。 研究の現時点での成果については、国際会議(10月)および国内学会(2月)において報告(口頭)を行うとともに、論文にまとめた。社会へのフィードバックとしては、「ひらめき☆ときめきサイエンス」を通して、子どもたちに研究成果を紹介・体験してもらった。また、安全なまちづくりに取り組む自治体に対して講演や情報提供を行い、その成果を活用していただいた。また、海外調査の結果については、報告書を作成し、関係者に配布するとともに、ウェブサイトで公開の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
量的データについては、複数の自治体における救急搬送データを得たことから、「受傷」「事故発生」という視点から指標の素案を設定する際に活用することができた。また、住民アンケート調査を実施し、受傷経験や安全に対する意識・行動に関する指標に活用するための情報を収集・分析することができた。さらに、これまで情報が不足していた子どもの受傷について、学校児童については学校管理課での受傷データを入手したことから、年齢を軸とした新たな指標を設定するための分析を行っている。加えて、就学前児童の受傷に関するデータ収集についても、自治体との共同により、現在、乳幼児健診時の情報収集が可能となり、現在準備を行っている。 質的データについては、国内の事例に関しては、予定していた自治体から情報収集を実施し、それら自治体間の比較を行うことができた。ただ、一方でセーフコミュニティに着手する自治体が増えており、それに伴い収集する情報量も増えており、それらの整理に当初の予定より時間を要している。 研究の成果(現時点)については、国際会議(10月)および国内学会(2月)において報告(口頭)を行うとともに、論文にまとめた。また、5月にも国際会議において報告予定である。社会へのフィードバックとしては、「ひらめき☆ときめきサイエンス」を通して、子どもたちに研究成果を紹介・体験してもらった。また、安全なまちづくりに取組む自治体に対して講演や情報提供を行っており、その結果、指標モデル(案)について導入いただいている。また、海外調査の結果については、報告書を作成し、関係者に配布するとともに、ウェブサイトで公開の準備を進めている
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今後の研究の推進方策 |
当初の想定よりも多くの情報・データを入手することができたため、その分析に予定よりも時間を要しているが、2014年度は、これらのデータの分析を終了し、現在、すでにいくつかの自治体で活用いただいている指標モデル(案)へ反映させる予定である。 自治体での試験的活用の成果を反映させたうえで、ソーシャルガバナンスがコミュニティに与えるインパクトを「量」と「質」の両面から評価する指標モデルの確定を行う。 具体的には、自治体が評価するにあたって活用できるデータの種類、内容、入手先などのリストの作成と自治体が記入していくことで質的変化を把握し評価できるレポートのテンプレートを設計する。また、定期的に住民に対して実施することで地域の安全・安心感や安全なまちづくりの仕組みに関する質的変化を把握できるアンケート調査票モデルをとりまとめる。 成果については、国内外の学会での報告や論文投稿等を通して発表する予定である。現時点では、5月に国際会議で報告を予定している。また、安全なまちづくりに取り組む自治体、セーフコミュニティに取り組む自治体に対して研修会や研究会を開催し、研究を取りまとめた「実践モデル」を提供する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外渡航を必要とする調査及び学会への参加については、受け入れ側から招待されたため、渡航および宿泊にかかる費用がかからなかった。 また、予定していた謝礼等については、他の予算によってカバーすることができたため、費用を要しなかった。 引き続き、海外の事例調査を行うのでその費用に充てるとともに、当初の予定より多く入手できたデータの入力(学校での受傷に関するデータおよび乳幼児の受傷実績に関するデータ)に要する費用に充てる予定をしている。 また、年度末には、研究成果をパンフレットおよび報告書にまとめるのでその印刷費用とする。
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