研究課題/領域番号 |
23510169
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
乾口 雅弘 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60193570)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ファジィ線形計画法 / ロバスト最適化 / 必然性測度 / 含意関数 / 修飾子母関数 / イルノウン集合 / 可能性測度 |
研究概要 |
ファジィ線形計画問題のロバストな取扱い方法について計画していた1~3に加え,4の研究を行い,良好な成果を得た.1.一般の含意関数により定められる必然性測度を用いる場合の満足水準最適化モデルの帰着問題とその解法について考察した.比較する左辺のファジィ集合と右辺のファジィ集合のメンバシップ関数がパラメータに関して凸および凹になる条件を調べ,含意関数がR-含意,S-含意,対偶R-含意である場合に,帰着問題が線形計画問題になる十分条件,緩和法と線形計画法を組合せて解ける十分条件を明らかにし,国際会議MDAI2011で発表した.2.線形修飾子母関数により定められる必然性測度について調べ,対応する含意関数を整理するとともに,満足水準最適化モデルに適用し,線形計画問題に帰着できる十分条件,帰着問題が緩和法と線形計画法を組合せて解ける十分条件を明らかにし,国内会議FSS2011および国際会議RSKT2011で発表した.3.ファジィパラメータが線形メンバシップ関数で定められる場合に一般の線形修飾子母関数を用いて定められる必然性測度を用いた満足水準最適化モデルに関する成果をまとめ,関連研究者が集う二国間会議CJS2011で発表した.4.より複雑な不確実性を取り扱うモデルとして,グレード付きイルノウン集合について研究し,基礎となる可能性測度,必然性測度の簡易計算法をまとめ,学術書籍に投稿し掲載されることになった.また,グレード付きイルノウン集合を含む関数の計算法についても研究し,ある条件の下で簡便に計算できることを示した.この成果を国内会議SSW2011で発表するとともに,国際会議IPMU2012に投稿し受理された.また,ロバストな取扱いに欠かせないグレード付きイルノウン集合の包含関係について考察し,その度合いの下限値の簡易計算法を明らかにし,国際会議に投稿した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一般の含意関数により定められる必然性測度を用いる場合の満足水準最適化モデルの解析は,過去の研究で培った解析法を援用して,比較的分かりやすい良い結果が得られたと考えている.また,線形修飾子母関数により定められる必然性測度については,繁雑になるので線形修飾子母関数を7種類に限定して行ったが,いくつか例外があるものの,三つのタイプと互いに対偶関係になる六つの関数で分類できることがわかった.また,メンバシップ関数の凹凸により,線形計画問題に帰着できる場合と緩和法と線形計画法で解ける場合が得られ,予想通りの成果が得られた.ファジィパラメータが線形メンバシップ関数で定められる場合に一般の線形修飾子母関数を用いて定められる必然性測度を用いた満足水準最適化モデルに関する成果は,研究の最初に得られており,一般の必然性測度を用いる場合とともに表にまとめることができた.一方,次年度以降に計画していた高次ファジィ集合を用いたロバスト最適化につての研究も進め,従来の直感的な取扱いがグレード付きイルノウン集合により合理的に取り扱えることを発見し,基礎となる成果を学術書籍や国際会議に投稿できた.一般の必然性測度の場合や修飾子母関数による必然性測度の成果の学術論文への投稿は予定より遅れてはいるが,いずれも特集号への論文招聘があり,近いうちに投稿できる.グレード付きイルノウン集合に関する研究成果が得られたことは大きく,全体的には,当初の計画以上に進展したといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,(1)一般の必然性測度の場合や修飾子母関数による必然性測度の成果を2件の論文として学術論文へ投稿する.(2)様相性最適化モデルや制約化モデルの場合を考察し,解法を考察する.特に,二分法と緩和法を併用する場合には,これらが同時に収束するアルゴリズムとなるよう工夫する.(3)メンバシップ値の序数性しか必要としない必然性測度について考察し,どのような修飾子母関数で定められるかを明らかにする.(4)意思決定者のロバスト性への要求に応じた必然性測度を求める方法の考察を始める.一方,(5)高次ファジィ集合であるグレード付きイルノウン集合のロバスト最適化への応用については、H23年度に得られた複数の成果を発表するとともに,その成果の一般化を試みる.また,(6)グレード付きイルノウン集合の包含関係について,その性質をより詳細に吟味し,線形計画問題に応用する.(7)グレード付きイルノウン集合間の大小関係を吟味するとともに,ロバスト順序回帰問題への適用を考察する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため,また,次年度以降に計画していた研究課題を研究遂行上優先させたため,当初の見込み額と執行額は異なったが,全体の研究計画に大きな変更はなく,前年度の研究費も含め,概ね当初の予定通り研究を進めていく.具体的には,ロバスト順序回帰問題と関連性を発見したのでこの分野への応用も視野に入れ,関連書物を購入する.また,掲載される論文の電子版が容易に入手できない場合には,別刷りを購入し,関連研究者に配布する.これらの物品費は概ね20万円と推定する.前年度に得られたイルノウン集合の複数の成果を内外の学術会議で発表する.また,研究成果の質を高めるため,内外の研究者と研究討論を行う.これらの旅費は概ね85万円と推定する.論文投稿に際し,英文校閲を依頼するとともに,数値例作成補助(実験補助)などの謝金として5万円が見込まれる.学会参加費などその他の費用として20万円が見込まれる.
|