研究課題/領域番号 |
23510170
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
得能 貢一 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40263488)
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キーワード | システマビリティ / 環境係数 / ソフトウェア信頼度成長 / マルコフ過程 / 運用段階における修復シナリオ / 無限サーバ待ち行列理論 |
研究概要 |
平成24年度は,前年度のシステマビリティを導入した種々のソフトウェア信頼性モデルを基に,サービス指向の可用性評価法の構築に展開した.特に,複数のサービス(仕事)を同時に処理するマルチタスクソフトウェアシステムに対して,システムのサービス指向型性能評価モデルを構築した.システム内の仕事の処理規程は無限サーバ待ち行列理論を用いて記述し,処理時間制約以内に処理が首尾良く完了する仕事数の確率分布を解析した.この分布に基づいて,単位時間当りに到着する仕事数に対する処理可能な仕事数の割合を表す瞬間仕事処理完了率やある時間区間に到着する仕事数に対する処理を完了することができなかった仕事数の割合を表す累積仕事損失率といったリアルタイム性を考慮した定量的なサービス可用性評価尺度を導出した.本モデルの数値実験では,基本モデルとしてNHPPモデルを採用したときには,環境係数の不確定度合が高まると楽観的な評価結果を示す傾向があるが,マルコフ過程モデルを採用する場合には,環境係数の不確定度合が高まると悲観的な評価結果を示す傾向があるなど,基本モデルによって評価傾向が異なることが確認された. また,ソフトウェア信頼性評価においてよく議論の対象となる事象である不完全デバッグ環境に着目し,デバッグ能力の不安定性とサービス指向型可用性評価との関係についても議論した.具体的には,デバッグ能力を反映する完全デバッグ率にランダム性を考慮し,サービス指向型性能評価モデルを再構築した.本モデルの数値実験では,デバッグ能力の不安定度合が高まると悲観的な評価結果を示す傾向があることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施した研究は,年度当初に作成した実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」に沿っており,ほぼ予定通りの達成度である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,環境係数の変動性の記述方法を再考する.前年度までに議論されたサービス指向型可用性評価法においては,環境係数の分布の様子は,ガンマ分布あるいはベータ分布を前提とした議論となっていた.しかしながら,環境係数の分布特性を合理的に推定することは困難であると考えられ,これらの分布を適用することが適切でない場合もある.また,これらの分布を前提としたときの実際の評価尺度の算出が困難な場合もあった.そこで,環境係数の分布を一般分布として捉えて,システマビリティ関数の近似的・簡便的計算方法について考察する.前年度までの手法との数値実験の比較を行い,本手法の近似精度や適用可能条件,あるいは評価傾向の違いなどを考察し,本近似手法の有効性を検証する. また,これまでに得られた成果をまとめるとともに,本研究で構築されたシステマビリティを導入したサービス指向型可用性評価法に基づくソフトウェアの品質/性能評価ツールを試作する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は357,463円の余剰が発生したが,これは予定していた研究打合せや成果発表が急遽キャンセルとなり,その旅費分が余剰金として発生した.次年度は,この余剰金をより効率的に研究を進めるための費用に充てる予定である.具体的には,資料整理補助の人員を増員したり,当初予定していたものより高性能なワークステーションを購入することを予定している. ●物品費(ネットワークストレージ,ワークステーションなど)●消耗品(数式処理ソフトウェア,開発環境,論文別刷など)●国内旅費(成果発表2回,研究打ち合わせ4回)●外国旅費(成果発表1回)●謝金(資料整理補助・7人×7日)●その他(会議費,文献複写料など)
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