研究課題/領域番号 |
23510175
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
開沼 泰隆 首都大学東京, システムデザイン学部, 准教授 (90204312)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | サプライ・チェーン・マネジメント / クローズド・ループ・サプライ・チェーン / グローバル・サプライ・チェーン / 生産/再生産 |
研究概要 |
今日まで,クローズド・ループ・サプライ・チェーンに関する研究としては,リマニュファクチャリングシステムにおいて総コストを最小とする新規生産量と再生産量を決定する研究,リマニュファクチャリングシステムにおける,新規生産と再生産と廃棄という戦略の最適な制御方法に関する研究,新部品とリユース部品の両方を使用するハイブリッド生産においてそれぞれの発注量を決定する研究が行われてきた.グローバル・サプライ・チェーンに関する研究としては,生産とロジスティクスでの情報面での協力に関する研究や,輸送量と移転価格と輸送費用の分配割合の最適化を行う研究など多くの研究が行われているが,Cクローズド・ループ・サプライ・チェーンにグローバルな視点を取り入れたグローバル・クローズド・ループ・サプライ・チェーン(GCLSC)に関する研究は少ない. 上記の背景の中で,本年度はアジア太平洋地域における第1国で回収された廃製品の一部を第2国に輸送し再生産を行う,二カ国間でのGCLSCモデルを提案した.目的関数は各国の法人税を考慮した上での両国での税引き後利益の合計である.決定変数は第1国から第2国へ送られる回収品の輸送量と,輸送が行われる際に企業内で決定される回収品1単位あたりの移転価格であり,目的関数を最大化する輸送量と移転価格の決定方法を線形計画法で定式化を行った.また,GCLSCに係る保管費,購入価格,法人税などのパラメータが目的関数に与える影響を検討するために,数値実験による感度分析を行った.感度分析の結果より,パラメータが目的関数にどのような影響を与えるかを示すことが出来た.また,あるパラメータの変化により目的関数は単調に増減するのではなく,頂点を持つことが判明した.これにより,パラメータから最適な輸送量と移転価格を導くことが出来るだけでなく,利益を最大にするパラメータ設計が出来ることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画は,(1)関連文献研究,(2)アジア・太平洋における資源循環の調査,(3)回収・物流管理モデルの開発,(4)ハイブリッド生産/再生産モデルの開発,(5)まとめと展望であり,各項目に対しての達成度は以下の通りである.(1)関連文献のレビューに関しては,クローズド・ループ・サプライ・チェーンおよびグローバル・サプライ・チェーンに関する最新の文献のレビューを行った.(2)アジア・太平洋における資源循環の調査に関しては,当初香港市立大学のK. K. Lai教授とともに香港における資源循環の塗油差を行う予定であったが,Lai教授の都合によって実施することができなかった.代わりに上海において中国における資源循環の実態調査を行い,中国における資源循環の知見を得ることができた.(3)回収・物流管理モデルに関しては,経済力に差のある二ヶ国間でのグローバル・クローズド・ループ・サプライ・チェーン・モデルの開発を行った.第1国で回収された廃製品の一部を第2国に輸送し再生産を行う,二カ国間でのモデルを提案した.目的関数は,各国の法人税を考慮した上での両国での税引き後利益の合計とし,決定変数は第1国から第2国へ送られる回収品の輸送量と,輸送が行われる際に企業内で決定される回収品1単位あたりの移転価格とした.目的関数の最適解を求めるために,線形計画法により定式化し最適解を導出した.(4)ハイブリッド生産/再生産モデルの開発は,今年度は第一段階のモデルをクローズド・ループ・サプライ・チェーン・モデルに組み込んだ状況である.これは,ハイブリッド生産/再生産モデルの知見と比較すると,回収・物流管理モデルの知見の方が少ないために優先的に行ったためである. 平成23年度は研究の初年度であったが,国内学会発表1件,国際会議発表1件,英文論文投稿1件とおおむね計画を達成できたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,(1)関連文献のレビューは指針の研究論文を中心に昨年に引き続いて行う.次に,(2)平成23年度実施できなかった香港における資源循環の現地調査や,ニュージーランドやオーストラリアにおける資源循環の調査を行う.(3)提案したモデルの改良を行う.特に,平成23年度開発したモデルは2ヶ国間のモデルであるが,これを多国間に拡張させることは本研究において必須条件となると考えられる.アジア・太平洋地域には多くの国々が存在し,経済状況も多種多様である.このような特徴をモデルの中に取り組むことを本年度の第一の課題とする.すなわち,多国間のグローバル・クローズド・ループ・サプライ・チェーンに拡張することにより,最適解の導出も格段に困難になると考えられるが,様々な解法を用いて最適解を求めることに取り組む.(4)さらに,上記で導出したモデルに,ハイブリッド生産/再生産システムモデルを組み込み,アジア・太平洋地域でグローバル.クローズド・ループ・サプライ・チェーン・モデルを構築することを検討する.このモデル開発の成果が得られた後,製品の種類やグレードが同一の生産/再生産モデルばかりではなく,種類,グレーの異なる製品に対してのハイブリッド生産/再生産モデルの検討を行う.(5)平成24年度のまとめを行う. モデルの拡張において,オーストラリアヴィクトリア大学のKamrul Ahasan博士およびイギリス Cardiff 大学のStephen Disney教授と今後の進め方について研究交流を行う.Kamrul Ahasan博士とは、アジア・太平洋地域の資源循環のクローズド・ループ・サプライ・チェーンに関する検討を主に行い,Stephen Disney教授とはハイブリッド生産/再生産モデルに関する検討を行う予定であ.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画は以下の通りである.(1)今年度も昨年度に引き続き最新の関連文献レビューを行う.そのために図書・論文誌購読料を250,000円程使用する.(2)アジア・太平洋地域の現地調査として,香港,ニュージーランド,オーストラリアなどの資源循環の調査を行う.また,コピー機,プリンターなどの事務機はタイでアジア・太平洋地域の生産/再生産が実施され,資源循環が実現しているケースがある.そこで,そのケースを視察するタイでの現地調査を行うことを考えている.これらの現地調査に調査研究旅費450,000程度を使用する.また,研究成果の公表を行うために国内学会,国際会議等で研究発表を行う予定であり,その際に申請旅費200,000円を使用する.さらに,(3)23年度に開発したグローバル・クローズド・ループ・サプライ・チェーン・モデルの改良を行う.特に,2国間から多国間への拡張は,モデルの開発および最適解の導出が中心となる.拡張したモデルの改善効果を検証するためには,シミュレーションによる検討が必要になってくる.モデルのパラメータが多いために,パラメータの組合せ数に応じたシミュレーションが必要になると考えられる.これらのシミュレーションによる検証には、大学院生の支援を受けることになるが,この支援に対して研究補助として約200,000万円程度を使用する.(5)その他として,発表や論文投稿のためにこの研究分野の学会に入会する必要が生じる,これらの学会年会費をその他の経費として支払う.(6)研究の遂行に当たり,コンピュータの周辺機器や,記憶デバイス,文房具などが必要になってくると考えられる,その様な場合,物品費を使用してその都度必要なものを必要な量購入し補充する.
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