研究課題/領域番号 |
23510175
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
開沼 泰隆 首都大学東京, システムデザイン学部, 准教授 (90204312)
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キーワード | クローズド・ループ・サプライ・チェーン / ハイブリッド生産/再生産システム / アジア・パシフィック / グローバル・サプライ・チェーン |
研究概要 |
アジア・太平洋地域におけるハイブリッド生産/再生産システムを研究テーマに,クローズド・ループ・サプライ・チェーンの設計と評価方法に関する研究を行った.特に,アジア・太平洋におけるグローバル・クローズド・ループ・サプライ・チェーン(GCLSC)の設計に関する研究を行い,アジア地域の国々で,部品サプライヤー,組み立て工場,販売拠点,再生加工拠点の4つの拠点を持つ多国籍企業が多国間にわたりCLSCを展開する,GCLSCNモデルの提案を行なった.目的関数を各拠点における税引き後利益の合計と定め,目的関数を最大とする拠点間の輸送量,分配される輸送費用,企業の内部価格である移転価格を求めることが可能となった.本年度の研究で得られ成果をまとめて以下の論文投稿を行った. 1)クローズド・ループ・サプライ・チェーンにおけるリマニュファクチュアリング,日本情報 経営学会誌,Vol.32, No.4,pp.17-22(2012.5),2)DESIGN OF A GLOBAL CLOSED-LOOP SUPPLY CHAIN NETWORK, Proceeding of the 2nd International Symposium on Operations Management & Strategy, CD-ROM(2012.11),3)Design of Global Closed-Loop Supply Chain Model, Journal of Japan Industrial Management Association(掲載決定) 論文のほかに,国内外の研究発表は4件行ない,2年目の目標としては概ね計画通りに進んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アジア・太平洋におけるグローバル・クローズド・ループ・サプライ・チェーン・モデルを構築することができた.このモデルは,多国間にわたりクローズド・ループ・サプライ・チェーンを実現するものであり,アジア・太平洋諸国の為替レート,法人税,輸送費用が明らかになれば,利益最大化のクローズド・ループ・サプライ・チェーン・モデルを設計することが可能となるために,達成度は概ね研究計画通りに進んでいると判断される. 現在までの研究では,部品サプライヤー,組み立て工場,販売拠点,再生加工拠点の4つの拠点を持つ多国籍企業が多国間でCLSCを展開する,GCLSCNモデルを提案した.このモデルでは,各国での法人税に注目し,目的関数を各拠点における税引き後利益の合計として,目的関数を最大とする拠点間の輸送量,分配される輸送費用,そして移転価格を求めるものである. 具体的には,4種類の拠点で構成され,経済力および経営環境が異なる多国間に渡って展開されるGCLSCNモデルを提案し,その有効性を確認した.先進国で再生産を行うよりも,発展途上国で再生産を行ったほうが費用を抑えることが出来るが,先進国で回収された廃製品をどれだけ発展途上国に輸送し再生産すればよいかはそれぞれの拠点の所属する国の生産にかかるコストや需要量等を考慮する必要がある.今回,それ以外に両国の法人税と部品や最終製品,回収品を輸送する際に企業内で決定される移転価格を考慮し,各拠点の税引き後利益を目的関数として定式化した.そして,目的関数を最大とする拠点間の輸送量,分配される輸送費用,企業での内部価格である移転価格を求めた.また,感度分析を行い,各パラメータが税引き後利益の合計に与える影響を明らかにした.この分析の結果は,GCLSCNを設計・管理しようと望む企業にとって良い指標となると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまで開発してきたグローバル・クローズド・ループ・サプライ・チェーン・モデルに,グレードを考慮したハイブリッド生産/再生産システムの機能を付与したモデルを構築すると,本研究の最終目標である,アジア・太平洋におけるグレードの低下を考慮したハイブリッド生産/再生産システムを完成することができる.ハイブリッド生産/再生産システムに関して,著者らのこれまでの知見は蓄積されており,平成25年度の終了時までには完成可能であると考えている.その一つとして,イギリス カーディフ大学のスティーヴ・ディズニー教授との「グローバルクローズド・ループ・サプライ・チェーンの確率モデルの設計」に関する共同研究を進めており,本研究の進展に大いに寄与するものになると考えている.また,オーストラリア ヴィクトリア大学のアーサン博士と進めている「ハイブリッド生産システム」の研究成果も本研究の推進に役立つものであると考えている. 以上のように2年間の研究成果にハイブリッド生産/再生産システムを組み込んだモデルの構築と最適化及びその検証を行なう. また、提案したアジア・太平洋におけるグレードの低下を考慮したハイブリッド・生産/再生産システム・モデルが妥当であるかどうかを確認するためにモデルの最適化及びその感度解析として,シミュレーションによる解析を行なう予定である. さらに,研究の最終年度のまとめとして、Production and Operations Management Society(POMS) 等の国際会議での報告,及びInternational Journal of Production Research,日本経営工学会誌などに投稿する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の仕様計画として,大きく旅費,物品費,謝金,その他の分野で使用する。旅費は,国際会議での研究成果の発表のための旅費,イギリス カーディフ大学のスティーヴ・ディズニー教授との研究交流のための旅費及びーストラリア ヴィクトリア大学のアーサン博士との研究交流の旅費として使用する計画である.国際会議は,アメリカでのPOMS年次大会、International Conference on Production Research (ICPR;ブラジル),Asia Pacific Regional Conference of International Foundation on Production Research(フィリピン)を計画している.物品費としては,ノート型コンピュータ及び周辺機器を購入し,提案モデルのシミュレーションによる最適解の検証及び結果の感度解析を行なう予定である.謝金として,大学院生によるシミュレーション及び感度解析などの補助に使用することを考えている.その他として成果報告のための論文投稿料,3年間のまとめとしての報告書等の印刷費に使用する.さらに,まとめの作業で一堂に会して意見を収集しまとめる必要がある場合には会議費を使用する計画である.
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