研究課題/領域番号 |
23510178
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
山地 秀美 日本工業大学, 工学部, 准教授 (20327018)
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研究分担者 |
辻村 泰寛 日本工業大学, 工学部, 教授 (80240977)
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キーワード | 群ロボット / マルチエージェント / 協調制御 |
研究概要 |
23年度の視覚情報による障害物・衝突検出手法CyberRadarのシミュレーション実験に基づき、実世界の複雑で多様なたくさんの障害物に対応するためにマルチGPUを用いたCyberRadarの並列処理を実装した。多数のオブジェクトを配置した実験では、2つのGPUを用いることでおおよそ2倍のパフォーマンスが得られた。マルチCPUやマルチコアCPUなどの並列化では、タスクを分配するためのオーバーヘッドが負荷となり、n個のハードウェアを用いてもパフォーマンスはn倍にはならない。これに対しマルチGPUを用いたCyberRadarでは、オーバーヘッドがきわめて少ないことが示された。この成果をICAART2013において発表した。 群ロボットの制御アルゴリズムについては、シミュレータを作成し基本的な制御アルゴリズムを実装、評価を行った。すなわち、シミュレータによって、複雑な障害物の存在する未知のフィールドを被覆するアルゴリズムの実行効率を実験で検証した。ソフトウェアエージェントによって制御される複数のロボットを未知のフィールドの境界に配置し、センサで周囲の障害物や他のロボットを探知しながら被覆を行う。エージェントは探知した障害物および被覆されていない領域の情報を共有し、領域の地図を作成しながら被覆を進める。効率よく被覆するには、一度被覆した領域を通る距離を可能な限り少なくする必要がある。複数のロボットによる被覆では、ロボット同士の干渉が起こると、被覆済みの領域を通らざるを得ない。ロボットを領域全体に分散して配置できれば干渉を減らすことができるが、未知の領域では困難である。エージェント同士が共有するフィールド状態や他のロボットの位置の情報から、分散して動作するためのアルゴリズムを複数用意し、比較実験を行った。この成果はIES2012にて発表し、IESの特集ジャーナルJACIIIに推薦された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
群ロボットによって未知の領域を効率よく被覆するには、群ロボットの初期配置および被覆動作中の分散配置、被覆動作、局所的な被覆を終えた時の次の被覆対象領域への移動方法の効率化が必要となる。 関連研究の調査から、1つのロボットによる被覆は、スパニングツリーを利用すればもっとも無駄なく実行できることが分かった。しかしロボット1台しか通れないような隘路が存在する場合はもちろん、未知の領域が対象である場合はスパニングツリーが構成できない。そのため左右に往復したり、壁伝いに動いて被覆対象となる領域を囲んだ上で中心に向かってらせん状に動く動作が選択対象となる。他に被覆対象領域の端に達したときにランダムに方向を変える方法がある。これらの方法の時間効率を比較したが、大きな違いがないことが明らかになった。つまり被覆動作は処理効率に大きな影響を与えない。 ロボットの初期配置については、未知の領域を対象とすると、広範囲に分散して配置することは現実的ではないため、領域の端に並べて配置することとした。そのうえでロボット同士が互いの距離を一定以上に保ちながら動作するような協調制御が必要となる。この点についても、未知の領域を対象とすると、検出済みの被覆対象領域のみに分散させるため限界があることがシミュレータによる実験から明らかになった。 局所的な被覆を終えた時、次の領域に移動する処理は、リアルタイムに行うことが必要であるため、エージェントが共有するマップから近似的に最も近い被覆対象領域を探す手法を開発した。しかし場合によっては無駄な動作を引き起こすことも多く、改良が必要となっている。 さらに、エージェント相互の情報交換の方法を改善し、より効率的なアルゴリズムを開発することが必要である。そのため実機での評価実験に入ることが遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
群ロボット制御のアルゴリズムの改良の方策を以下の方向で検討する。 ・領域に配置された障害物の形状は配置方法の特性による効率の評価 これまで実験を行ってきたフィールドは、2つの隘路と凹凸を含めた複雑な障害物が配置されている。しかし凸多角形の障害物が離散して配置されていたり、縦横に広がる壁から構成されていたりするような領域では、これまでと同じ問題が発生するかどうかが確かめられていない。こうした障害物の形状および配置特性によってどのような問題が発生するのかを調査し、一般化された被覆アルゴリズムが開発可能かどうかを検討する。 ・共有情報を利用したシステマティックな動作による効率化 これまでのアルゴリズムでは、未知領域のマップを作成し共有しながら被覆を進めたため、検出できた被覆対象領域が少なくなると、ロボットがある地点に集中し干渉が激しくなる。こうした問題は隘路を含む領域では避けられない。そこで被覆のための動作つまり被覆動作、被覆対象領域への移動に加え、被覆対象領域を探査する動作を加え、他のロボットとの協調により、動作を選択できるようにする。いくつかのロボットは検出された被覆対象領域の被覆のための動作を行い、いくつかは被覆対象領域の検出を行う。後者は領域の境界に達したところで被覆動作に切り替えて活動を行う。 群ロボットの実機の開発については、当初予定していた視覚情報を利用したロボットの開発のための基礎として、上記のアルゴリズムを実装したプロトタイプの開発が必要である。各ロボットの位置情報を、全体を監視するWebカメラによって計測したデータから与えた上で、制御アルゴリズムの検証実験をプロトタイプのロボットを用いて行う。これによりアルゴリズムを改善し、当初の目的だった視覚情報による実機の開発につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
群ロボット制御アルゴリズムの改良と評価実験の結果をまとめ、IESの特集ジャーナルJACIIIに投稿するとともに、SMC2013(2013 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics)における成果発表を行うための支出を予定している。 実機の開発については、プロトタイプ開発のための経費が必要である。マイコンを利用したロボットを6機程度開発し実験を進める予定である。したがって、開発と実験のための人件費支出を予定している。 視覚情報を利用した実機の開発では、当初ノートPCを制御用に搭載する予定であったが、距離センサKinectも搭載することから自律走行車(ER1)の重量負荷をできるだけ減らす必要が生じてきた。そこでノートPCに代えてタブレットPCを搭載し実験を行う予定である。
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