群ロボットによる被覆作業の効率低下をもたらす主要な原因として、1.ロボットの初期位置から遠く離れた地点に孤立した被覆対象領域が残される、2.これまでに提案した近似的最短経路探索法、さらに複雑に障害物が配置された領域では実時間で経路を求められない場合が発生する、という2点が明らかとなった。 1については、被覆過程で被覆領域が分割されて孤立した領域が発生する際の領域選択方法と、周囲に被覆対象がなくなって次の被覆対象領域に移動するときの領域選択の方法が問題となる。前者についてはより小さい領域を優先的に選択することが効率的であることがシミュレーションによって示された。後者については、初期位置からより遠い領域を選択する方法を提案した。複雑に障害物が配置された領域では、より遠い領域を判断するには、ロボットが通ってきた経路を利用して、過去の経路に戻る方向ではなく進む方向にある領域を選択する方法を提案した。 2については、1で用いたロボットの経路情報を利用する手法を提案した。近似的最短経路計算は深さ優先探索を用いるが、その際実時間で到達できる深さまで探索し、求められない場合は経路を逆に辿ることとした。しかし経路を逆に辿るのは最短とはならないため、近似的最短経路の計算は常に繰り返すこととした。これらの手法を5種類の領域に対して評価実験を行った。 その結果はAROB 20st 2015および情報処理学会第77回全国大会において論文発表を行った。 実機による実験を行うため自律的な制御方法を用いた試作のロボットを作成した。ロボットの正確な位置を知る必要があるが、カメラやGPSを用いるためにはロボットの大型化が不可欠となるため、領域全体を見渡すカメラでロボットの位置を認識し無線でロボットに伝達する手法を用いた開発を行った。ロボットおよびシステム全体をすべて開発したため年度内に完成に至らなかった。
|