研究課題/領域番号 |
23510185
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山本 秀男 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (50377066)
|
キーワード | ICTシステム / リーダーシップ / プログラムマネジメント / 多重請負 |
研究概要 |
SI事業者のマネジャーは、プロジェクトのステークホルダーからどのように期待されているか、プロジェクトを成功させるためにはどのような点に留意しなければいけないかについて研究した。平成24年度は、中堅SI企業の社員研修の場を借りて、プロジェクトリーダーに必要と思われるスキルと人間関係に関する12項目の質問を行った。 その結果、若手技術者がリーダーに対して抱くイメージは「技術的なリーダーシップ像」であるのに対して、リーダー経験者は「経営方針に関係するリーダーシップ」を望む傾向がある事がわかった。具体的には、入社2~3年目の若手は、コミュニケーション・情報提供に関する期待が多く、人間的に尊敬できる人であって欲しいという具体的な内容が挙げられている。これに対して、リーダーを一度でも経験した者の回答には、自覚・信念・意志統一力など、抽象的な表現が多く見られた。「自分がリーダーになった時にどのような支援が必要か」という問いに対しては、入社2~3年目の若手は、技術的な支援や相談相手を上げているが、リーダー経験者は、リソースや費用など経営に関わる課題に対する判断が必要であるという回答が多かった。 また、過去の失敗事例を題材にした意見交換形式の研修を行ったところ、研修後のアンケートは、研修前と比較して、問題が発生した場合の具体的な対処方法の記述が増え、また、どの様な状況下でもプロジェクトを推進できる楽観的思考も必要であるという自らの精神面を反省する記述も見られた。 上記のヒアリング内容を国際P2M学会春季大会で発表し、さらに、分析・考察を加えて査読あり論文誌に投稿し掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の検討により、日本の商慣行であるSI事業者の多重請負構造の問題点が浮き彫りになったため、受注者側の視点に立ったマネジメント手法の評価研究に切り替えた。まず、受注者の問題を抱える中規模のSI企業の企業研修の場を利用して、ヒアリングを実施したが、そのデータ整理に時間がかかった。 さらに、平成23年度後半から着任した研究行政職(研究科長)の業務が平成24年度も引き続き増加するとともに、平成24年度に専門職大学院認証評価を受けるための準備と認証評価実地調査への対応業務が加わったため、当初予定していた研究時間を確保することができなかった。 上記の理由から、平成24年度に執行予定だった研修教材研究用に準備した費用の執行が大幅に遅れてしまったが、平成24年度後半にはSI企業の社長と大学院生との共同研究の形で進めることが出来たため、大幅に進捗の遅れを回復することが出来た。11月と12月に研修を実施し、研修の効果を定量的に把握することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度後半の研究結果を平成25年度前半に学会発表する。また、現場のヒアリング調査と、ビジネススクールでの調査を総合化して、当初本研究計画で予定していた「ミドルマネジャーが持つべきマネジメント能力助長のための教育プログラム」に必要な座学研修教材をそろえるための研究を加速する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「人件費・謝礼金」は、平成24年度に引き続きICTシステム構築企業に対するヒアリングと、ビジネススクール院生らを対象に実施するヒアリングにかかる費用に充当する。 「物品費」と「その他」は、ミドルクラス人材の育成とマネジメントに関するに関連する海外調査資料や雑誌の購入に充てる。今年度の「旅費」は、主に国内の学会参加と調査のための交通費として使う。
|