本研究課題では、1. 水準によって正規性が崩れる場合の測定精度の研究:(1) 定量下限の付近での実際の共同実験データの解析による分布の研究、及び (2) 下限が存在する場合の分布のモデル化の研究、さらに、2. 水準によって分散が異なる場合の多試験室多水準共同実験の研究: (1) 外れ試験室の検出法の研究、及び (2) 推定される精度の推定性能の評価と必要な試験室数の研究、また、3. 併行精度、中間精度、再現精度のロバスト推定法の研究、を目的として研究を進めている。 この研究は現在の精度評価の方法の性能を科学的・統計学的に明らかにすることが目的である。ISO 5725 は精度評価に関する基本規格であり、本研究で得られた知見を ISO 5725 並びにISO 13528の改訂に反映させることにより、広く国際的に貢献することが可能になる。 目的の1. 「水準によって正規性が崩れる場合の測定精度の研究」に関しては研究代表者が統計専門家として参画している日本適合性認定協会の技能試験データに基づいて引き続き研究を進めている。目的の2. (1) 「外れ試験室の検出法」に関しては、既にその方法論を提案しており、モンテカルロ法によって精密な棄却限界値を導出する準備を進めている。目的の2. (2) 「推定性能の評価と必要な試験室数」に関しては、再現精度推定量の分布の近似分布について検討を行っており、既に結果の一部を得た。目的の3 「精度のロバスト推定法」に関しては、研究に着手し、検討すべき方法の考案ついて検討を行っており、既に結果を得た。 これらの結果を、2015年6月に中国・大連で開催されたISO/TC 69/SC6総会で発表し、有益な議論を得た。
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