研究課題/領域番号 |
23510190
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
大谷 紀子 東京都市大学, 環境情報学部, 准教授 (70328566)
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研究分担者 |
増井 忠幸 東京都市大学, 環境情報学部, 教授 (00061565)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | CO2排出量 / 貨物割当 / 配送経路 / 共生進化 |
研究概要 |
最初に,CO2排出量が最小となるような配送経路を求める最適化問題として,CO2排出量最小化配送経路探索問題(Vehicle Routing Problem with Minimum CO2 Emissions; VRP-MCE)を定義した.本問題は,最短経路探索問題よりも目的関数の値が訪問順序に大きく依存する.CO2排出量が少なくなるような近隣地点の訪問順を探索すると同時に,CO2総排出量が少なくなるような近隣地点の配送経路の並べ方を探索する必要がある.また,実用化を視野に入れると,実用に耐え得る時間での解探索が求められる.以上の問題の特徴と要求事項を踏まえて,進化計算アルゴリズムの一種である共生進化に基づいて解を探索する手法を提案した.評価実験では,最短経路よりも距離が長く,CO2排出量が少ない配送経路を得ることができた.次に,配送する貨物をいくつかのユニットに分割し,ユニットごとに貨物を別便で配送することでCO2排出量が削減される可能性に着目した.貨物の分割配送を考慮することで,トラックの最大積載量を超える量の貨物配送にも対処が可能となる.配送経路と同時に貨物割当をも決定するようにVRP-MCEを拡張して,CO2排出量最小化配送経路探索・貨物割当問題(Vehicle Routing and Cargo Allocation Problem with Minimum CO2 Emissions; VRCAP-MCE)を定義し,合わせて共生進化に基づく解探索手法を提案した.提案手法における遺伝子の表現方法として,遺伝的アルゴリズムで一般的に使われているパス表現,順序表現,ランダムキー表現を共生進化に適用できるよう変更し,評価実験を行なった結果,パス表現により最も良好な配送経路と貨物割当が得られることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の主目標としては,本研究の前段階として提案してきた解探索手法の改良を掲げていた.配送先データの前処理の方法,遺伝子の表現方法,適応度関数の定義,進化戦略,各種パラメータの設定などについて検討し,良好な結果を得るための方向性をつかむことができた.特に,本研究で提案する解探索手法で有効な遺伝子の表現方法を明確にできたことは,今後の研究を進めるにあたって大きな成果といえる.また,懸案事項であった処理時間についても,許容範囲内で妥当な結果が出力できることを確認した.さらに,さまざまな配送先データに対する出力結果を分析することで,どのようなときにどのような経路で配送すると二酸化炭素排出量を削減できるのかに関して知見を得た.研究の過程で,貨物の分割配送によってCO2排出量が削減される可能性があることがわかり,対象問題を再定義するとともに,変更に対処できる解探索手法を提案した.また,これまでCO2排出量は改良トンキロ法に基づいて算出していたが,この方法では空荷での走行におけるCO2排出量を正確に求めることができないことがわかり,今後の課題として提起することとなった.当初予定していた配送担当ドライバーの意見聴取は実現に至らなかったが,新たに浮上した問題への対処や問題提起ができたことにより,現在までの達成度はおおむね順調と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
まず,平成23年度に実現できなかった,現場の事情に詳しい物流事業者に対する意見聴取を実施する.本研究の提案手法で配送経路を求めるシステムを現場に導入するにあたってどのような問題が発生するか,我々が想定している使用状況や判断基準の他にどのような点を考慮して配送経路を決定すべきかなど,研究内容を実態に即したものにするための情報を収集する.次に,物流事業者の保有するトラックの最大積載量と台数を考慮できるよう問題を再定義し,合わせて解探索手法を改変する.これまで,使用するトラックの最大積載量を1種類に固定し,トラックの保有台数を考慮していなかったことに起因する問題を解消する.さらに,着荷主不在による貨物の持ち帰りや配達途中で発生する再配達の考慮を試み,それぞれ着荷主不在と再配達発生の確率を考慮した経路を探索できるようにする.研究を進める過程において,物流事業者への意見聴取等から想定すべき状況が新たに見つかった場合には,適宜拡張目標項目に追加する.
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次年度の研究費の使用計画 |
成果発表を行なう国際会議の変更,物流事業者への意見聴取の未実施,研究費が全額支給されない可能性の通達による購入コンピュータのランク変更などにより余剰金が発生した.この余剰金は,以下に記すように,平成24年度以降の成果発表や追加物品購入にあてる.平成24年度の第一目標である物流事業者への意見聴取のための謝金として使用する.また,人工知能学会第26回全国大会,日本経営工学会平成24年度秋季研究大会,The 10th Global Conference on Sustainable Manufacturing,および進化計算学会2012年進化計算シンポジウムでの成果発表を予定しているため,発表に係る参加費および旅費に使用する.さらに,投稿論文を執筆して採録された際の掲載費,より多様なデータを用いた長時間にわたる実験を安全に実施するための無停電電源装置の購入費,地形情報を加味する際の情報料またはソフトウェア代として使用する.
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