研究課題/領域番号 |
23510190
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
大谷 紀子 東京都市大学, 環境情報学部, 准教授 (70328566)
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研究分担者 |
増井 忠幸 東京都市大学, 環境情報学部, 教授 (00061565)
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キーワード | CO2排出量 / 貨物割当 / 配送経路 / 共生進化 |
研究概要 |
前年度に定義したCO2排出量最小化配送経路探索・貨物割当問題(Vehicle Routing and Cargo Allocation Problem with Minimum CO2 Emissions; VRCAP-MCE)では,使用するトラックの最大積載量は1種類に固定されていることを前提とし,物流事業者が保有するトラックの台数にも制限がかけられていなかった.本問題点を受け,本年度はまず,物流事業者の保有するトラックの最大積載量と台数を考慮できるよう問題を再定義し,共生進化に基づく解探索手法を提案した.提案手法では,配送開始時刻から終了時刻までの時間の増加を回避するために,同一トラックの複数回使用を抑制しつつ,CO2総排出量が最小となるような貨物割当と配送経路を探索することができる.評価実験の結果,保有トラックの種類と台数に応じた配送経路と貨物割当が得られることが確認された. 次に,実用化に主眼を置いた研究に取り組んだ.より実用的な手法を提案するためには,現場の事情を考慮したうえで,対象問題の制約条件と目的関数を設定する必要がある.CO2排出量最小化配送経路・貨物割当問題の制約条件と目的関数について,さまざまな観点から検討した.また,サンプルデータを用いた実験を実施し,問題設定の変化による貨物割当と配送経路の相違を示した.さらに,ロジスティクスの専門家をはじめとする3名の有識者にインタビューを行ない,物流事業者が配送経路を決定する際の基準,および二酸化炭素排出量最小化と作業効率の維持・向上の両立などについて,知識の提供を受けた.二酸化炭素排出量最小化と作業効率の維持・向上の両立が懸案事項となっていたが,専門家からの知識提供によりある程度の打開策が得られ,今後の研究の方向性を定めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の主目標としては,現場の事情に詳しい物流事業者に対するインタビューを掲げていた.ロジスティクスの専門家2名に加え,輸配送管理システムを開発・販売している企業の社長に対してインタビューを実施し,研究内容を実態に即したものにするための情報を収集することができた. また,第2の目標としていた問題の再定義に関しても,物流事業者の保有するトラックの最大積載量と台数を考慮できるように再定義し,合わせて新しい解探索手法を提案した.これにより,使用するトラックの最大積載量を1種類に固定し,トラックの保有台数を考慮していなかったことに起因する問題を解消することができた.懸案事項としていた空荷走行の際のCO2排出量についても,代替案を提示することができた. 着荷主不在と再配達発生の確率の考慮にまでは至らなかったが,実用性を重視した手法の検討が進められたことや,我々の取組みが学会で評価されて論文執筆の依頼を受けたことからも,現在までの達成度はおおむね順調と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施したインタビューを通して,現場ではCO2排出量よりもコストが重視されること,および荷主から物流事業者に委託された貨物は,複数の下請け業者に割り振られて配送されることが明らかになった.今後はまず,CO2排出量だけではなく,物流事業者と下請け業者のコストをも考慮した貨物割当と配送経路の探索手法の開発に取り組む.物流事業者はできるだけ委託費用が低くなるように下請け業者が所有するトラックへの貨物割当を決定する.一方,下請け業者にとっては,委託された配送を低コストで実施することで,利益が向上する.配送費用は主に人件費と燃料費であるが,CO2 排出量が少ない経路で配送することで燃料費を削減することができる.また,環境に配慮した物流を実現することで,社会にも貢献できる. 配送経路探索にはこれまでと同様に進化計算アルゴリズムが使用できるが,CO2排出量とコストの両者の削減を目標として貨物割当も同時に考えるには,他の手法との組合せが有効であると考えられる.最初は,暫定的に簡易な方法との組合せを試し,得られる解の傾向や特徴を把握したうえで,より精度の高い解を算出する方法を考案する. また,研究を進める過程で,貨物割当と配送経路探索において想定すべき状況が新たに見つかった場合には,適宜拡張目標項目に追加して,研究を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に研究費が全額支給されないかもしれないとの連絡を受けて購入するマシンのスペックを抑えたこと,および平成24年度に共同研究者が国際会議に出席できなくなったことが原因で,過去2年間の研究費に残額が生じている.これを踏まえて平成25年度は,より研究を円滑に進めるための高性能マシンを購入する.また,人工知能学会第27回全国大会,日本経営工学会平成25年度秋季研究大会,The 18th International Symposium on Logistics,および進化計算学会2013年進化計算シンポジウムでの成果発表を予定しているため,発表に係る参加費および旅費に使用する.さらに,投稿論文を執筆して採録された際の掲載費,より多様なデータを用いた長時間にわたる実験を安全に実施するための無停電電源装置の購入費,地形情報を加味する際の情報料またはソフトウェア代として使用する.
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