本研究では,低炭素社会の実現への一助をなすことを目的として,複数の配送先に対する貨物配送において,二酸化炭素排出量が最小となるような配送経路と貨物割当を探索するアルゴリズムの考案に取り組んだ. 最初に,CO2排出量が最小となるような配送経路を求める最適化問題として,CO2排出量最小化配送経路探索問題を定義し,より実践的な問題とするために,2段階に分けて問題を拡張した.第1段階では,配送する貨物をいくつかのユニットに分割し,ユニットごとに貨物を別便で配送することでCO2排出量が削減される可能性に着目した.貨物の分割配送を考慮することで,トラックの最大積載量を超える量の貨物配送にも対処が可能となる.ここで,配送経路と同時に貨物割当をも決定するように問題を拡張した.第2段階では,物流事業者の保有するトラックの最大積載量と台数を考慮できるよう問題を再定義した.配送開始時刻から終了時刻までの時間の増加を回避するために,同一トラックの複数回使用を抑制しつつ,CO2総排出量が最小となるような貨物割当と配送経路が解となる.各段階において,共生進化に基づく解探索手法を提案し,許容範囲内の処理時間で妥当な結果が得られることを確認した. 研究の最終段階では実用化に主眼を置き,ロジスティクスの専門家をはじめとする有識者に対して実施したインタビューの結果に基づいて,物流事業者と下請け業者のコストをも考慮した貨物割当と配送経路の探索を目指した.まずは,物流事業者のコストがある程度低くなるように貨物割当を仮決定し,CO2排出量が減少するように微調整する方法を提案し,最終年度には,より効率よく最適解を探索するために,ハーモニーサーチに基づく手法を提案した.また,他の進化計算アルゴリズムを適用した場合の有用性についても検討し,本研究で対象としている問題への有効性とアルゴリズムの特徴を明確にすることができた.
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