研究課題/領域番号 |
23510202
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
御室 哲志 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (90507112)
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研究分担者 |
高梨 宏之 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (30398333)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 安全システム / 予防安全 / ドライブレコーダ |
研究概要 |
第1年度の2つの実施項目である、(A)ヒヤリハットデータベース解析と、(B)実車計測システムの構築について、研究実績の概要を以下にまとめる。(A)ヒヤリハットデータベース解析 タクシーに搭載されたドライブレコーダによって記録されたヒヤリハットデータを用い、追突ヒヤリハット事象の解析を行った。TTC等の2車両間の物理指標を核としながら、先行車への接近をもたらす様々な要因(シナリオ)の洗い出しと分析を以下のように行った。シナリオ分類表を作成し,東京都内で発生した追突高レベルヒヤリハット200件を分析し,シナリオ分類表に基づいて36のシナリオに分類した.200ケースの分類結果から,先々行車が関わるシナリオの割合が37%と高かった.次に発生割合が多かったのが,先行車の右左折が関わるシナリオで19%であった.その他にも横断者が関わるシナリオが13%,信号が関わるシナリオが8.5%と,いずれも比較的高いことが分かった.発生割合が5%以上だった8つのシナリオについて、新たな警報ロジックを案出し, TTCを用いて効果検討を行った.その内、シナリオ番号21,22,23,9に対応する新提案の警報では大幅に警報タイミングが早くなった.(B)実車計測システムの構築 前記ヒヤリハットデータベース解析において、実フィールドデータではシチュエーションが複雑で、分析困難な場合が多い。単純化したシチュエーションを、意図的にクローズド環境の中に作り出し、実車走行試験で評価するに当たり、追突ヒヤリの形態に適した実車計測システムが必要であり、当該システムを構築・実装し、動作確認を行った。主たるセンサは前方監視用のスキャンレーザーセンサで、各種車両挙動センサや先行車との車車間通信による先行車データの入手の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において、第1年度は(A)ヒヤリハットデータベース解析(B)実車計測システムの構築の2項目を実施することとしており、以下のように計画通りの進捗である。(A)ヒヤリハットデータベース解析 ヒヤリハットデータからの代表値読取作業が膨大であるため、読み取り表を作成して、専任作業者が読取を実施した。最初の目標である、追突ヒヤリハット事象をシナリオ分類することについては、周囲の交通状況などにより36のシナリオに分類できた。また主要なシナリオの半数において、新たな警報ロジックを提案することができた。本項目としては計画通りの達成度となっている。(B)実車計測システムの構築 前方監視用のスキャンレーザーセンサをフロントバンパ下部に角度調整可能に取り付け、また、各種車両挙動センサや先行車との車車間通信による先行車データの入手のための機器を搭載した。これらセンサや通信機と車載用パソコンを、シリアル、USB、A/D変換器、LANで結線し、同期のとれたデータ収集システムを構築・実装した。大学構内道路および一般道で動作確認を行った。一部、リアルタイム判断ロジックの構築にも着手し、予定通り乃至は若干進んだペースの達成状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に沿って順調に推移しており、次年度も予定通り、(B1)実車走行試験(クローズド環境)の実行をメインに取組み、また(B2)実車走行試験(オープン環境)についても試行できるように準備する。以下の4項目を実施する予定である。計画の変更は特にないが、次年度の研究開発内容はハードルが高いと考えており、工夫を凝らしたアルゴリズムを開発する等により、目標を達成するつもりである。(A)ヒヤリハットデータベース解析:前年度の解析結果を受け、実車試験に適用可能なシナリオを準備し、警報システム構築に必要なデータ収集項目を洗い出す。また解析結果の精査と評価を進める。(B1)実車走行試験(クローズド環境):前記ヒヤリハットデータベース解析において、実フィールドデータでは多くの要素が入った複雑なシチュエーションになりがちである。単純化したシチュエーションを、意図的にクローズド環境の中に作り出し、実車走行試験で評価する。具体的には、先行車からの情報を活用するなどして、警報システムがより効果的になること等を明らかにする。(B2)実車走行試験(オープン環境):前項の試験車と先行車を一般道路において、通常運転としての追従走行をさせ、意図的ではない状況下での先行車接近時のデータを収集する。この場合、試験遂行の能力工数から、ドライバは固定された1人のみとする。これにより、データの数やバリエーションとしては限定的であるが、直接、運転支援システム設計へのフィードバックが可能なデータが得られる。(C)警報システム評価:最終年度のリアルタイムの警報システムの実現へ向けての準備として、基本的なリアルタイム機能の作り込みを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(B)実車計測システムの構築におけるソフト開発部分において、別の学内資金も充てることができたため、当該研究費が生じた。当該研究費は、翌年度の研究において最も困難が予想されるリアルタイム警報システムの構築部分の強化に充てる予定である。実走行試験の環境を単純にすることで、対応するリアルタイムソフトを簡易なものとして、アダプティブな警報ロジックの本質的な部分だけに絞り込み、限られた研究費で実効を上げる計画であったが、単純化すると言えども、実走行環境下で動作するソフト開発にはかなりの工夫と工数が必要である。実フィールドデータのより複雑なシチュエーションに対応し、より多くの追突ヒヤリの形態に対応できるシステム開発が望まれるため、当該研究費は有効に活用できると考えている。
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