研究課題/領域番号 |
23510204
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
山本 久志 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (60231677)
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研究分担者 |
新行内 康慈 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (90267774)
秋葉 知昭 千葉工業大学, 社会システム科学部, 准教授 (60505767)
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キーワード | 連続型 k-システム / 信頼度 / アルゴリズム / 最適設計 |
研究概要 |
拡張連続型 k-システムとは、システムを構成するコンポーネントが1カ所に集中して故障するとシステム故障となるシステム(連続型 k-システム)を平面、または立体へと多次元化したシステム、及び、システムとそれを構成するコンポーネントが複数の状態を持つ多状態化したシステムの総称である。これらのシステムは、例えば2次元や3次元の物体のパターン認識確率の評価、立体的に配置されたセンサー(例えば衛星)等による監視システムの評価、デジタルサイネージ・液晶画面に代表される集積画素を用いた表示器の評価、複数種類の発電方法を連携させて地域全体の給電を効率良く運用する電力のコミュニティグリッドの最適運用と評価などに適用される。本研究はコンポーネント故障が従属な拡張連続型 k-システムの信頼度算出方法(状態分布関数)及び最適構成導出方法と設計指針提案を行うことを目的とする。 本年度は前年度に引き続き、従属な拡張連続型 k-システムの評価のための基礎的なコンポーネントの状態とシステムの故障条件との関係を明確にするために、最適配置の評価基準をシステム状態の期待値とした場合における多状態連続 k-out-of-n:F システムの最適配置を一意に導く各コンポーネント状態確率の関係(条件)の調査を更に検討した結果、1) 特定条件において一意に最適配置が決定できるコンポーネントの状態確率の関係を明確にした。加えて 2) 大規模な多状態連続 k-out-of-n:F システムの最適設計問題のためにSAを用いた効率的な効率的な疑似最適配置算出方法を新たに提案した。 更に 1) 2) の考え方を引き続き検討し、3) 多期間制約サイクル問題における最適切替問題への応用と、一般ネットワークの特別な場合に拡張した 4) 多目的ネットワークシステムのパレート解部分集合算出方法の新たな提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2状態の拡張連続型 k-システムについて、Domination 理論による従属な場合のシステム信頼度評価、並びに、Signature 理論による動特性評価を体系化し統一理論の構築するために「② Signature 理論と Domination 理論の統一理論の構築」と、拡張した「⑤ 拡張 Signature と拡張 Domination の提案」の試行を続けており、この成果は平成25年度にまとめる。 本年度は主に「⑥ 多状態の従属な拡張連続型 k-システムの評価基準の算出方法及び最適構成導出方法の提案」を行うための基礎研究として、多状態連続型 k-システムの最適配置問題において、システムの状態確率の期待値を評価関数とした場合の最適配置を決定するコンポーネントの状態確率の傾向解析に取り組んだ。その結果、1) 小規模なシステムにおいて特定条件下で最適配置が一意に決定できるコンポーネント間の状態確率の関係を数理解析により導くことができた。同時に、この問題のシステムサイズに対する一般化を進めるための着想を得た。しかし、大規模システムの最適設計問題のためには 1) の手法では限界があるため、2) 多状態連続型 k-システムの最適配置問題にSAを用いた効率的な疑似最適配置算出方法の改善を進めることで、多状態の拡張連続型 k-システムの最適構成の傾向の全容を明らかにし、従属性を考慮に加えることで、本研究課題の検討を進めた。 更に、本研究課題の実社会への適用可能性を考察するために、3) 多期間制約サイクル問題における最適切替問題への応用と、4) 多目的ネットワークシステムのパレート解算出方法とパレート解部分集合算出方法の提案を進めた。 以上の通り、本年度は研究計画に基づき概ね計画通りに進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究最終年度として、「② Signature 理論と Domination 理論の統一理論の構築」と「⑤ 拡張 Signature と拡張 Domination の提案」の基礎提案を目標と定める。そのために前年度までの成果を踏まえ、先行して結果を得た「④ 2 状態の従属な拡張連続型 k-システムの信頼度算出方法及び最適構成導出方法の提案」の厳密解法による導出方法を完成させる。このとき拡張連続型 k-シ ステム の故障条件などのシステム固有の性質の利用可能性を明確にすることで、可能な限り広範囲の従属性が表現できる統一理論の提案を目指す。これにより、② と ⑤ の統一理論に関する足がかりとなる方法を確立する。 次に最適構成を決定する評価関数を検討した上で解析的手法により得られた最適構成の特徴と傾向を探るために、小・中規模なシステムにおける最適配置(厳密解)の傾向を実験的に検証し、より広範囲な条件で適用できないか考究する。このとき、大規模なシステムの評価は困難であるため、進化論計算を用いた疑似最適構成導出方法の提案に検証結果を適用し、大規模なシステムの最適構成の特徴と傾向を探る。そして、得られた知見を活用し、2 状態の従属な拡張連続型 k-システムの評価方法と最適構成導出方法の効率化を図る。 次に ⑤ を踏まえ、多状態連続型 k-システムの最適配置問題の解法の成果を拡張することで、次に「⑥ 多状態の従属な拡張連続型 k-システムの評価基準の算出方法及び最適構成導出方法の提案」するための基本的なアルゴリズムの提案を行う。 また、④ で進める従属な拡張連続型 k-システムの信頼度算出方法を拡張し、「⑦ コンポーネント状態に従属性がある一般的な(ネットワーク)システムの設計指針提案」を図る。 「① 国内外の文献調査」は、平成25年度も継続して進め、今後の研究発展への道標を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度発注したノートPCと、従来のコンピュータの補修部品の交換により、予定していた数値実験に対して性能面で十分な機能を持つため、本年度は主にデータ整理/発表と研究の最終報告のための支出を主とする。 研究担当者の山本は研究成果の整理と発表、並びに本研究の最終報告のために、主に各種消耗品の購入を計画する。また研究の最終的な成果を国内外の研究者と議論し、評価を得ることで、本研究の成果に対する正確な評価と、次なる研究発展への新たなアイデアの創出を図るために国内会議と国際会議への出張を各1回計画する。そして、研究成果のデータ整理のための研究補助と、成果論文発表への支出を計画する。 研究分担者の新行内と秋葉は数値実験の結果を有効に整理するためのメディア等の準備、および研究成果の整理・発表のための各種消耗品購入を計画する。また研究途中の成果を議論し新たなアイデアを創出するために国際会議への出張を1回、成果論文発表のための支出をそれぞれ計画する。なお、直接経費の未使用額(残金)は上述のPC調達方法の工夫による経費減および数値実験実施の遅れによるものである。
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