本研究の目的は,急性期病院における看護師の迅速な患者支援行動を導く情報想起の現状について明らかにし,煩雑な急性期医療の現場での患者支援のための情報想起モデルの開発を行うことである.研究は以下の3つのステップを踏んだ. (1)迅速さが求められる患者支援項目にはどのようなものがあるか,また,迅速な対応のためにどのような環境を構築しているのか,そしてその成果はどうなのかを,(2)の対象となる医療看護支援ピクトグラム導入病院と同等の改築を控えた500床規模の病院の看護管理者および医療安全担当者を対象に,面接調査を行い明らかにする. (2)医療看護支援ピクトグラムを導入している病院の看護管理者および医療安全担当者を対象に,医療看護支援ピクトグラムの活用状況を(1)で明らかになった患者支援項目を中心に分析し,情報想起としての医療看護支援ピクトグラムの有用性と課題について明らかにする. (3)(1)(2)の結果から患者が安心と信頼を実感する看護師の迅速な行動を促進する情報想起モデルを開発する. インタビューの結果から,看護師が患者に対して迅速な対応をするための情報想起モデルとして,情報環境別想起モデルが示唆された.ここでいう情報環境とはベッドサイドとスタッフステーションである.この2カ所が看護師たちの主な想起場所であることがインタビューから明らかとなった.ベッドサイドでは患者および患者のベッドサイドの設えによって情報を想起していたことから,疾患や治療により生じた制限のある「生活様式」を主とした情報を意図的に提示することが有用であり,医療看護支援ピクトグラムは活用できると考える.一方,スタッフステーション内では他職種を含めたスタッフの動き,会話,室内表示が情報を想起させ,2つの場の特徴を明確にした情報想起モデルの提案となった.
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