研究課題/領域番号 |
23510210
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研究機関 | 大島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
岡村 健史郎 大島商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (60194388)
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研究分担者 |
岡宅 泰邦 大島商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (70413838)
吉岡 信和 国立情報学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20390601)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
本研究は、養殖場や漁港近辺を対象に、安価なカメラを複数台用いて撮影し、侵入物体を検出・追跡することで、人物や物体の異常行動を、低コストで精度良く自動検出するシステムの提供を目的としている。 しかしながら、海上を含む領域を対象に侵入物体を検出しようとすると、波浪や潮の干満により海面部分が常に変化するため、これに応じて海面の明度、係留された船などの浮遊物の位置、および潮位が常に変動し、カメラを用いて精度良く検出することが不可能であった。我々はこの様な問題に対して、安価な家庭用ビデオカメラを用い、画像に含まれる背景変動を表現する固有空間を作成し、入力画像をこの空間へ投影することで、薄暮を含む昼の時間において撮影した画像から侵入物体の領域を精度良く検出できることを示した。 一方、湾岸を対象にした監視では、監視領域が大きいため、カメラから遠く離れた物体は観測画像上では非常に小さく写り、2次元画像情報だけではカメラに近い場所での誤検出画素と区別できない。この問題に対処するため、視点固定カメラに対してカメラキャリブレーションを実施し、世界座標(3次元座標)と観測画像の画素との対応関係を求めた。この対応関係とパーティクルフィルターを用いることで、固有空間法により用いた画像上の侵入物体領域の、実世界上の座標系(3次元)における物体の位置と大きさを精度良く求めることが出るようになった。 また、湾岸領域での犯罪は主に夜間に発生する。そのため、監視は昼夜を問わず可能にする必要がある。そのため、本研究では上記の様な実世界上の座標系(3次元)における物体の位置と大きさが、赤外線カメラを用いて求めることが可能であることを示した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
養殖場や漁港近辺を対象に人物や物体の異常行動を検出するシステムを以下の計画にて構築している。このシステムにおいて今年度は主に昼夜を問わず侵入物体領域を精度良く追跡する技術の構築を目指している。この技術のために平成23年度では主に1)検出した侵入物体領域の位置と大きさを3次元空間上で判定することにより、大きさや形状情報から誤検出を減らす工夫をする。2)夜間においてはビデオカメラと赤外線カメラを用いて対象を撮影し、それぞれの結果を統合して処理をすることで、夜間における精度向上を目指した。 まず、「検出した侵入物体領域の位置と大きさを3次元空間上で判定し、大きさや形状情報から誤検出を減らす工夫をする」に関して、単眼の視点固定カメラを用いることでコストを抑えつつ、カメラキャリブレーションを行うことで、観測した画像(2次元)上の画素と実世界上の座標系(3次元)との対応付けをまずおこなった。更に、パーティクルフィルターを用いて、パーティクルを実世界上に散布し、各パーティクルの尤度算出に、固有空間法で求めた背景を用いるようにした。この固有空間法で求めた背景を使うことで、様々な背景変動を吸収できるようになり、パーティクルが波による海面の明度変化や、係留された船などの浮遊物に位置変化に影響されることが少なくなった。これにより、海面や浮遊物を侵入物体として誤検出ことを大きく減らすことが出来た。 「夜間においてビデオカメラと赤外線カメラを用いて対象を撮影し、これらの結果を統合によることにより精度向上を計る」に関して、監視カメラに赤外線カメラ利用を用い、暗視下での精度を向上を計った。コストを用いるために比較的安価な赤外線を用いたため、観測画像の解像度は低くなったものの、低解像度の赤外線監視画像でも、湾岸領域という広範囲の領域を観測し、進入物体を検出できることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、「侵入物体を追跡することで得られる時系列情報から異常行動を検出」ことを目標にする。観察領域に進入した物体の全てが不審なものではない。特に、昼間は多くの人物が観察領域に進入してくるため、これら全てを通報すると監視システムの信頼性低下につながる。そのため、この中から不審な行動をする人物や物体を選択し、その候補だけを画像とともに通報することが必要になる。この機能に対応するため以下の二つの処理を行う。 (1)「検出した物体を追跡し、物体の種類を判別する」不審な行動と判定するために、まず、23年度の研究において抽出した進入物体の領域に対して物体の大きさやその形状から船、車、バイク、人物などの物体の種類を判定する。 (2)「物体の行動パターンを時系列化した記号として表現し、記号列をもとに異常行動を検出する」(1)の処理にて物体の種類が判明した後、その位置、移動速度、移動方向からQ:停止、S:直進、R:右に移動L:左に移動、などの移動方向と、V:非常に速く、F:速く、S:ゆっくり、などの速度を組み合わせ、物体の種類毎に行動時系列を SS・RS・RS・RSなどと表現する。予め、正常な時系列パターンをデータベース化しておき、正常パターンの範疇に入らないものを異常行動として識別する。この部分に関しては、コンピュータウイルス検出の手法を用いて実現する。平成24年度は、行動パターンの記述方法の検討と実際の行動パターンの収集を行う。 平成25年度はシステムを構築し、近辺の養殖場や漁港付近にてフィールド実験を行い、実用化に向けた課題を抽出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)データ保存サーバ用ディスク 20万(2)屋外使用可能無線システム 10万円(3)屋外使用可能1Box型小型Linuxコンピュータ2式 20万円(4)旅費 13万円 (5)消耗品(プリンタートナー、画像記録用等) 7万円
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