研究課題/領域番号 |
23510210
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研究機関 | 大島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
岡村 健史郎 大島商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (60194388)
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研究分担者 |
岡宅 泰邦 大島商船高等専門学校, その他部局等, 教授 (70413838)
吉岡 信和 国立情報学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20390601)
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
人口の減少と高齢化という問題を抱える地方の養殖場や漁港では、監視が手薄となり事件や事故が多発している。本研究はこのような問題に対処するため、漁港などの領域に侵入してくる物体を、カメラ画像を用いて自動的に検出・追跡し、物体の識別と異常行動の判別を、昼夜を問わず行うことが出来る監視システムの構築を目標にしている。 初年度において、夜間監視を行うためにサーマルカメラカメラ(解像度160×120画素)を用いて湾岸領域を監視し、その画像から3次元上で侵入物体の存在位置とその大きさを推定した。しかし、この解像度が低いため、カメラのわずかな傾きや位置の変化が、背景画像の大きな変動となり、検出精度がそのカメラの設定に影響されるようになり、検出精度を上げるためにカメラの設置やその撮影に膨大な時間をかける必要があった。そこで今年度、解像度が384×288画素と高いサーマルカメラを導入し、これを屋外に固定設置し、典型的な地方の漁港である周防大島町小松港を24時間365日観測できる態勢を整えた。現在、この高解像度のサーマルカメラを使った画像と昨年まで使用していたサーマルカメラから得られた画像を比較することで、どの程度の精度向上につながるかを検証しているところである。 次に、複数物体に対する異常行動を検出する手法の開発を行った。まず、複数人物を撮影したビデオ画像を対象に、フレーム間差分処理とハールウェーブレット変換により鮮鋭化をした後、MHI処理を用いて特徴抽出を行った。このデータに対して異常行動の認識を実施した結果、実時間処理が可能で、誤識別率が30%程度の認識が可能であることが分かった。現在、この結果を基にサーマルカメラから得られた画像に対して本手法が有効であるかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、養殖場や漁港近辺における密漁、漁具の盗難、漁港施設への無断侵入などの事件が発生する中、これらに備えて湾岸付近を対象にした保安警備システムへの要求が高まっている。特に、人口の減少と高齢化という問題を抱える地方の養殖場や漁港では、監視が手薄となり事件や事故が多発している。本研究はこのような問題に対処するため、漁港などの領域に侵入してくる物体をカメラ画像を用いて自動的に検出・追跡し、物体の識別と異常行動の判別を昼夜を問わず行うことが出来る監視システムを、3年間で提供するものである。 初年度において、カメラから遠く離れて存在するため小さく写った物体と、カメラに近い場所にて発生する誤検出とを区別するため、視点固定型カメラに対してカメラキャリブレーションを実施し、世界座標(3次元座標)と画像座標(2次元座標)との対応関係を求めた。この結果、物体を3次元上で追跡できるようになり、その存在位置や大きさが単一の視点固定型カメラにて追跡できるようになった。 2年目の今年度において、夜間監視の精度向上と複数人物に対する異常行動の検出を行った。まず、夜間においても移動物体が撮影可能なサーマルカメラを屋外に固定設置し、本校近くの漁港を24時間365日観測できる態勢を整えた。このカメラは、昨年度まで用いていた赤外線カメラに比べ解像度が高く、鮮明な画像を得ることが出来る。このカメラを用いて撮影した画像から、従来に比べより正確な物体の存在位置や大きさが検出できることが分かった。更に、ビデオ画像を対象にMHIと濃度勾配を使って特徴抽出を行い、SVMを用いることで複数人物に対して異常行動の識別が良好であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、湾岸付近に進入してくる船舶や人物を、カメラを用いて追跡し、その異常な行動を検出する、低コストで精度の高い監視システム構築を目指している。この研究には、様々な時間や天候下で撮影した入力画像に対する評価が不可欠である。平成24年度までの研究において、単一の視点固定型サーマルカメラを用いて昼夜を問わず湾岸部を安定して記録する体制を整えた。更に、サーマルカメラを用いて、昼夜を問わず物体を追跡し、その位置と大きさを推定出来ることが分かった。また、複数の人物を撮影した画像から異常行動を識別出来ることが分かった。 これらの結果を踏まえ、最終年度では以下の三つを主に行う。 (1)サーマルカメラを用いて取得した画像に対して、物体の大きさや移動速度から、物体の種類を判定する。(2)移動物体の種類が明らかになったデータに対して、異常行動を判断する手法を確立する。(3)実用化に向けた取り組みを行う。 物体の異常行動を判断するには、物体ごとに行動パターンを、正常行動と異常行動に分け学習する必要があることが分かった。そこで、まず、追跡する物体を、人物、船舶、自動車、その他に分類し、それぞれの物体に対して、異常行動識別を行うSVMを作成し、異常行動を判別する。これらの実験において、特に実用性や頑健性を向上させるため、実際の漁港を対象に、様々な時間や天候下で撮影した画像を用い評価を行う。 更に、実用化を考え、1Boxコンピュータと安価な赤外線カメラを用いてシステムを構築し、同様の性能を得ることが出来ることを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計算サーバーに対するリモートデスクトップ同時接続権(Terminal Services CAL) 15万 赤外線カメラ 20万 旅費 20万 消耗品(データ記録用SDカード、プリンタートナー等) 15万
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