研究課題/領域番号 |
23510214
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研究機関 | 独立行政法人労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
大澤 敦 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 電気安全研究グループ, 上席研究員 (20358435)
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キーワード | 静電気障災害 / 帯電 / 除電 / 電気流体モデル / イオン / コロナ放電 / 静電気対策 / 品質管理 |
研究概要 |
本研究の目的は,これまでの科研費課題で開発した二次元電気流体モデル(帯電物体は導体)を絶縁物に適用できるように発展させて,絶縁物のコロナ除電現象を理論的に明らかにすることである。絶縁物では帯電電荷と反極性のイオンが到達した部分のみが除電されるため,導体除電とは現象が大きく異なることが予測できる。さらに,実際の除電対象は絶縁物であるので,より現実的な現象を扱うことになる。また,除電器の性能を評価する標準試験法では,試験の簡便性から帯電物体として導体を用いている。つまり,帯電物体を導体として得られた結果を絶縁物の除電に適用する場合の妥当性を検討すべきであり,そのためには導体と絶縁物で除電現象の相違を明らかにする必要がある。絶縁物の除電では,イオン挙動が除電面とは反対側の電荷にも影響され,さらに,被除電物体の面積が大きい,または,これが移動している場合は,イオンが被除電物体の反対側に十分に到達することが困難であるので,十分には除電されないであろう。実際に起こっている不具合はこれらによるものと予測できる。ここでは,これらのトラブルに対応する除電現象をシミュレートし,原因を解明して,それを解決する研究を実施する。 当該年度予定の導体と絶縁物の除電現象の比較は,23年度に終了したので,これをまとめて国内・国際会議,論文(印刷中)に報告した。この比較により絶縁物の除電は初期表面電荷に依存することが示唆されたので,5種の初期表面電荷分布(一様;表のみ正;裏のみ正;表が正,裏が負帯電;表が正負両極性帯電)について標準試験法を対象として除電現象を調査した。初期表面電荷分布に依存して,除電器によって静電気トラブルや着火を誘引しうる両極性帯電や過除電(逆帯電)が除電の初期段階に生じうることを示した。これを防止するための除電器の適切な配置を提案した。結果は国際会議,論文(印刷中)として報告される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画の当該年度(24年度)実施予定の導体と絶縁物の除電現象の比較のシミュレーションは23年度に繰り上げて実施したので,23年度報告段階で研究計画を変更し,絶縁物除電の初期表面電荷分布の依存性について調査する研究を研究を実施することにした。これは,導体との比較のシミュレーションで,イオン挙動が絶縁物の表面電荷分布に強く依存することが予期されたからである。今年度は,この繰り上げて実施した導体との比較のシミュレーションの成果をまとめて,国際会議,論文(印刷中)にて報告した。さらに,この変更計画した種々の初期表面電荷分布の絶縁物除電のシミュレーションについて実施した。成果は国際会議,論文(印刷中)として報告される。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の25年度に実施する項目は,除電器直径の影響と絶縁物厚さの影響を調査する予定であったが,エキスパートや研究協力者等から要望された移動帯電物体の除電に着手することにした。当初計画よりも重要なテーマであり,移動物体を取り扱うことから,より現実的であり,シミュレーション技法としても興味深い内容となる。モデル対象はトラブルの多い工程の搬送フィルムの除電である。モデリングと計算コードの開発,シミュレーションの実施により,これの除電現象を調査し,搬送フィルム工程に生じているトラブルを解決する方策を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
搬送フィルム除電のシミュレーションを実施するための諸費用,必要に応じて実験検証を実施しているので,その費用,研究成果の発表(国内・国際会議および論文投稿)のための費用,さらに,研究協力者との議論のための会議(国際交流も含む)も開催する予定であるので,これらの費用に使用する。
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