開発途上国における震災障害者の生活再建において求められる支援制度について、インドネシア、ハイチを中心に検証した。研究実施過程において新たに、2011年の東日本大震災、2012年のアメリカ・ハリケーンサンディが発生したことから、これらの災害による被災者支援制度(先進国の事例)との比較検討を行った。 開発途上国については特にインドネシアを中心に調査を実施した。インドネシアについては、災害を機に震災障害者支援制度が新たに構築されているものの、予算的な制約により、政府の予算が提供できる範囲でのみ支援が提供できているという実態が明らかになった。そのような政府の脆弱性を、民間からの支援が補完しており、NGOによる「地域にねざしたリハビリテーション」を通した支援が、被災者の生活再建に貢献していることが明らかになった。 震災障害者支援における官民連携の重要性という傾向は、東日本大震災、アメリカの事例においても確認された。アメリカについては、2005年のハリケーン・カトリーナを機に、被災者支援策として、災害ケースマネージャーが被災者宅を訪問し「被災者のみたされぬニーズを満たす」ことを目標とした災害ケースマネージメントプログラムが試行された。2008年には災害対策法(スタッフォード法)が改正され、2012年のハリケーン・サンディで制度適応が行われていた。 以上の検証から、震災障害者支援制度においては、①支援金の提供という一時的な救済措置だけでは生活再建の実現は難しいこと、②支援においては官民連携による災害障がい者を巻き込んだネットワークの構築が重要であり、その仕組みを制度化する必要性がある点が明らかになった。
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