小型船の動静把握には目視による探知では限界があることから、レーダによる小型船の探知性能(レーダによる電波的視認性またはレーダ視認性)の向上を図る必要がある。 1年目は、レーダ反射信号(ビデオ信号)をA/D変換してディジタルデータとして取得する計測システム(レーダ映像観測装置)の開発を行った。当初、開発に遅れが生じたものの、不具合を解消し装置の試験運用を実施したことから、所定の成果を得た。 2年目は、実海域における小型FRPボートのレーダ反射信号特性やレーダ反射器の定量的な効果等について、2つのアスペクト角(90°及び0°)及びレーダ反射器(2種類)の搭載・非搭載の状況でのレーダ映像データを収集し、信号強度とRCS(Radar Cross Section)を比較解析することで評価を行った。その結果、アスペクト角0°は、アスペクト角90°に比べてRCSが半分程度であること、レーダ反射器の搭載によりRCSは2倍以上に増加していること、RCSの分布特性が必ずしもSwerlingのモデルと一致していない場合があること等を明らにした。 3年目は、本研究をまとめるために、追加のデータ収集を行うと共に、アルミ系素材をFRP船に付加した状況でのレーダ映像データを収集し、信号強度とRCS(Radar Cross Section)に関して検討した結果、市販のアルミ製素材を小型FRP船に付加することによって一定のRCSの向上効果があることが明らかになった。また、船舶運航者の視点に立ち、レーダ映像の判読で重要となる映像の2次元分布特性(エコー・ペイント)についても明らかにした。以上から、研究実施の意義・重要性は大きいと考える。 なお、本研究の成果については、研究代表者が所属する学会の講演会及び国際学会で発表を行うなど、広く発信を行ったことから、当初の研究目的は達成できたものと考える。
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