研究概要 |
近年、時間は事象が起きたときにのみ進むとするNatural Timeという新しい時間概念に基づいて臨界現象の時系列解析(NT解析)を行うと、システムが臨界点に達しているか否かを推定できることが示された(Varotsos et al., PRE, 2002)。すなわち、臨界状態に達した場合にはκ1とよばれる指標の値が0.07に収束するという。我々はNT解析の理論的妥当性を種々の既知の臨界現象によって示したが (Varotsos et al., 2011)、2012年度には、まず地震は臨界現象であるとの見地から、我が国の数個の大地震発生前のNT解析を気象庁地震カタログについて行なった。κ1の計算には臨界状態の別の指標である地震電気信号(SES)活動発生時から解析を始めるのが、常道であるが、我が国ではSES データが存在しない場合が多いので、特殊なパラメータ探索法が案出された。その結果、2000M7.3鳥取県西部地震、2008M7.2岩手宮城地震などでは明確ではなかったが、1995M7.3兵庫県南部地震, 2004紀伊半島沖地震、2005M7.0福岡県西方沖地震等の明確なκ1―>0.07、即ち臨界状態が検出された。また、κ1頻度分布がG-R則のb値と密接に関連すること、その変動度が大地震発生の1ないし数ヶ月まえに減少するという事実もその存在が指摘され、現在その統計的研究が進捗中である。また神津島で観測されたSESが地震先行した現象であることを統計的に示した論文も出版した(Orihara et al., PNAS, 2013)
|