研究課題/領域番号 |
23510221
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 博明 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (60019495)
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研究分担者 |
鈴木 桂子 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20192544)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 噴火様式 / 新富士火山 / 霧島新燃岳2011年噴火 / 斜長石 / 粘性係数 / 火道径 / マグマ含水量 / マグマドレインバック |
研究概要 |
新富士火山の噴火様式と岩石組織の関係については、過去3500年間の主要な噴出物(宝永、貞観、湯船第2、砂沢、大室、S-18、S-12、鷹丸尾、檜丸尾、剣丸尾)について、全岩化学組成、モード、斜長石組成を分析し、斜長石ー石基間のCa-Na分配から噴火前の浅所マグマ溜りでのマグマ含水量の推定を行った。爆発的噴火についてはいずれも初期マグマ含水量(3-4wt%)に近い値のものが多かったが、非爆発的な噴出物では貞観溶岩と剣丸尾溶岩が低含水量であったが、檜丸尾と鷹丸尾溶岩では比較的含水量が多く、浅所でのマグマ上昇過程でのマグマ脱ガスが重要であることが示唆された。 東伊豆火山群について、過去3500年間の溶岩と苦鉄質包有物の試料採取を行い、全岩化学組成、鉱物分析を行っている。これまでの所、かわご平溶岩流のガラス質溶岩の形成条件について検討し比較的低温(800℃)マグマが低速度で上昇・脱ガス・流下したことが推定された。 霧島新燃岳2011年噴火について、初期サブプリニー式噴出物と、引き続いた火口埋積溶岩の分析を行い、火口埋積溶岩のドレインバックの可能性について評価を行った。火口埋積溶岩試料は2月1日のブルカノ式噴火で放出された岩塊を分析した。全岩化学組成、全岩含水量、石基ガラス組成、温度、結晶量、等からマグマ粘性係数として10^9-11Pasの値が推定された。サブプリニー式噴火の噴出率からConflowプログラムを用いて火道半径として13-17mが推定され、これらから火口埋積溶岩のドレインバック速度として1月で最大、噴出溶岩量の30%程度の値が得られた。安山岩溶岩では噴火時の脱ガス結晶化により粘性係数が大きくなりドレインバックが生じ難く、また霧島新燃岳の場合は2011年噴火後も下からのマグマ供給があったため、ドレインバックが生じなかったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
富士火山玄武岩についての減圧発泡結晶化実験、かわご平溶岩流についてのTTT 図作成実験については、定年退職により部屋の使用権を失ったため、装置は廃棄され実験実施が困難になった。他大学の装置を共同利用等で使用する可能性もあったが、実施に至って居ない。その代わりに、ちょうど新たに噴火した霧島火山新燃岳噴出物の岩石組織解析から噴火様式の予測に関する研究を行うことができた。 別大学での人材養成事業に関わったために時間の余裕が乏しくなり研究実施が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
実験的研究については余裕があれば、他大学装置の使用を打診する予定である。 当初の計画である、新富士火山の噴火様式と岩石組織の関係については全体の取り纏めを行いたい。(旅費、分析装置使用料金)伊豆東部火山群についても天然溶岩の化学分析、鉱物分析によりできるだけ天然の噴火過程をモデル化するよう勤める。霧島新燃岳2011年噴火について、爆発的➡非爆発的の遷移のモデル化、火口埋積溶岩のドレインバック評価について取り纏めを行う。 他大学での人材養成事業については殆ど義務(授業等)を外してもらった。
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次年度の研究費の使用計画 |
・野外調査、試料採取:東伊豆火山群 (旅費)・試料の分析用粉末作成・全岩化学分析(その他)・試料の研磨薄片の作成、鉱物化学分析、岩石組織解析(岩石切断機、機器使用料、消耗品、その他)・噴火モデルの検討(PC➡MELTSプログラムの使用、火道流モデル計算)・研究成果の公表(旅費、英文校閲料、その他)
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