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2011 年度 実施状況報告書

孤立した大地震被災地の初動救命活動を支援する可搬動力システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 23510222
研究機関昭和大学

研究代表者

佐藤 満  昭和大学, 保健医療学部, 准教授 (10300047)

研究分担者 井野 秀一  独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究グループ長 (70250511)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード地震災害 / 救命活動 / 救命機材 / 水素吸蔵合金 / シール技術
研究概要

本課題が目指す機器の実現に不可欠な技術要素は、機器備蓄時の水素吸収を維持しながらより低温での水素放出特性に優れた「水素吸蔵合金の開発」、水素密閉性を高めた昇揚機構等の「動力変換部の開発」、水素放出に不可欠な「熱源と熱伝導部の開発」、救命隊員等が現場で使用する際の「ユーザビリティー」がある。このうち、「水素吸蔵合金」は本課題の仕様に適合する組成の選定と試作鋳造を行い、低温での水素放出性能が高い組成(LaNi5系)の製作に至った。さらに希土類を使用しない組成で同等な水素放出性能の実現を図る取り組みを行っている。「動力変換部」は最も単純な形状の伸縮昇揚型装置の伸縮機構部の水素密閉性を向上させるための素材の選定を行い、耐熱性に優れた粘土を主成分とする膜材料を用いて水素密閉フィルムと上記材料を複合化した気密部品を試作する段取りを提供企業と交渉中である。「熱源」については小型軽量で発熱量が高い生石灰やアルミ粉末の加水反応を利用した加熱ユニットを開発する方向で、この技術を製品化している企業の技術指導を得る傍ら、発熱反応を促進するための新規技術として石灰等を不織布に収納して水の行き渡りを促進する方法の試作を製造企業と交渉中である。 また災害時の救命活動の主力を担う消防庁特別高度救助隊(ハイパーレスキュー隊)の技能研修に参加し、実務に従事する隊員から本課題の救命装置に求められる仕様や操作性に関する指導を受けた。現場では昇揚ストロークは小さい方が扱いやすいこと、過大な衝撃や高温に耐える装置でなければ使用に耐えないことなどが隊員から指摘され、当初の装置仕様(水素シール材や昇揚機構など)を見直す必要に迫られた。その他に本課題で達成すべき最もシンプルな装置構成とその駆動方法についての特許申請を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本課題が目指す装置は、極めて特殊な専門的技能を有した技術者が特殊な環境で使用するため、現場に赴くことがない一般者にはうかがい知れない使い勝手や利用品質が要求される。災害時の救命活動を担う消防庁特別高度救助隊(ハイパーレスキュー隊)の隊員からの本課題の救命装置に求められる仕様や操作性に関する要求仕様の聴取から、過大な衝撃や高温に耐える装置でなければ使用に耐えないことなどが指摘され、当初想定していた装置仕様のうち、救命装置の水素シール性の向上をもたらす材料を大幅に見直す必要に迫られ、素材の再選定に予想外の時間を要した。このことから、高度な水素シール性を備えたフィルム材やO-リングなどのシール部材の試作にまでは現時点で至っておらず、平成24年度の課題となっている。この開発要素が本課題の達成度に大きく関わる技術要素となるため、その試作とシール性の評価実験を急ぐ必要がある。水素吸蔵合金自体に関しては当初の計画通りの試作・評価を行い、想定以上の特性がすでに得られている。また熱源の開発については、課題申請時には災害現場で調達可能な可燃物の利用を想定していたが、レスキュー隊員からの要求の聴取から、簡易な操作で迅速に作動させられることが優先されると判明したため、熱源を独自に設けて装置本体に内蔵する方式の開発を優先させる方針に変更している。そのため、熱源とその伝達技術に関する開発は申請時の見込みよりもやや遅れている。

今後の研究の推進方策

平成24年度は、災害現場での閉鎖空間を拡大する昇揚機構の「動力変換部」の水素密閉性を高める新たなシール部材の試作を行う。水素吸蔵合金が発生する水素圧を直接的に昇揚機構の力源にするためには、昇揚機構の確実な水素シール性が要求される。この目的での昇揚機構にはテレスコピック型とバッグ型があり、複数段の扁平円筒が伸縮するテレスコピック型ではスライド部分のO-リングでの水素シールが課題である。比較的低圧(1.0MPa以下)でのゴム製以外の新規素材のO-リングを試作筐体に実装して水素漏出試験をまずは実施する。さらにテレスコピック型の内部を複層アルミラミネート製のベローズで覆う手法を併用することで、水素気密性は一段と確かなものになる。既存のラミネートフィルムはシーラント層の水素シール性が十分とは言えないため、鉱物膜材料をシーラントに利用するフィルムを試作し、水素漏出試験を実施する。またバッグ型の昇揚方式は硬質ゴム製の空気圧バッグが現在のレスキュー隊の装備となっている。このゴムバッグの内面に鉱物製材料の皮膜を形成することで、水素透過性を遮断できる可能性があり、鉱物膜材料製造企業の協力を得て試作品を作成し、上記の試験と併せて水素シール性を確認する。以上の課題の成果は、瓦礫等の昇揚型救命機材の他にも、スプレッダー等の救命機材にそのまま応用可能である。 上記の方策に加えて、当該機器により適した特性の水素吸蔵合金組成の開発を行う。具体的には、加熱終了後の水素吸収能力、および備蓄保存時の水素吸収能力の向上を目指す。さらに組み込み型小型熱源や現場での燃焼物によって発生する熱を、気密容器に密閉された水素吸蔵合金に効率よく伝導させる機構の構築を行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成23年度の申請時に主要物品として計上していたH2よりもリークしやすいヘリウムガスを用いた気密素材特性評価装置用に使用するヘリウム検知器は、試験素材の試作が遅れているため未購入のままとなっている。さらに分担研究者の所属施設にある同等の検知器が利用可能となる見込みとなった。従って、この物品に相当する経費は、平成23年度に水素シール性能評価装置の製作費としてその一部の部材に使用したほか、当該機器のユーザビリティー評価を目的として現在高度レスキュー隊に配備されている救命装置の購入に充当した。さらに平成24年度には同評価装置をH2でも評価可能となるよう、水素ガス測定器や装置筐体、水素シール部材等の購入に流用する予定である。さらにヘリウム検出器の購入に計上していた経費の一部を水素シール性に優れた膜材料をメーカーから購入する費用、および小型熱源の試作に必要な生石灰やアルミ粉末の購入費用に充て、不織布製造企業にこれらを不織布繊維に混入させた試作品を発注する費用に充当する予定である。 さらに協力を仰ぐ企業は関東圏以外が多いため、試作やその改良に関する打合せ等で企業を訪問するための旅費、および救命装置のユーザビリティーをさらに向上させるために京都府の消防特別高度救助隊等の機器利用者との情報交換のための旅費等に使用する予定である。 その他に、当該機器に使用する水素吸蔵合金の材料費、その鋳造設備を有した施設への旅費、最も単純な形状の伸縮昇揚機構の救命機器の筐体試作等に本年度の研究費を充当する予定である。なお平成24年度は50万円以上の主要物品の購入は行わない予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A system utilizing metal hydride actuators to achieve passive motion of toe joints for prevention of pressure ulcers: a pilot study2012

    • 著者名/発表者名
      M. Hosono, S. Ino, M. Sato, K. Yamashita and T. Izumi
    • 雑誌名

      Rehabilitation Research and Practice

      巻: Volume 2012, Article ID 541383 ページ: 7 pages

    • DOI

      10.1155/2012/541383

    • 査読あり
  • [図書] Assistive Technologies2012

    • 著者名/発表者名
      S. Ino and M. Sato
    • 総ページ数
      20ページ
    • 出版者
      In-Tech Publishing

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公開日: 2013-07-10   更新日: 2019-08-09  

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