研究課題/領域番号 |
23510225
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
上村 靖司 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (70224673)
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研究分担者 |
関 嘉寛 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (30314347)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 雪害 / リスクコミュニケーション / ワークショップ / 地域防災力 |
研究概要 |
本研究の目的は,有力な除雪支援者とは言い難い未経験の外部支援者の関与による減災プロセスの分析と,雪害に対する地域防災力向上のためワークショップ手法の確立により,雪害犠牲者の大幅低減に繋がる一般的・普遍的手法を見いだすことである. 「越後雪かき道場」の取組は,地域内互助、近隣からの労働力提供という一般の除雪支援の枠組みと異なり、地域外(特に非雪国)からの参加者を募り,「労力の提供」よりは除雪というやや特殊な作業の「研修」が主たる目的となっている.そのため「除雪の担い手不足の解消」という課題の解決には直接つながらないのだが、これまでの取り組みから地域住民への安全意識啓発の絶好の機会になるという手応えを感じていた。今冬は、新潟県十日町市と長岡市,富山県黒部市および南砺市の計6箇所を対象として、除雪安全講習会(雪かき道場としての開催は4回)を開催した。うち4箇所で、屋根等高所からの転落防止策として必要性が叫ばれながらも普及が進まない「命綱」の講習会を開催した。対象は概ね住民と支援者が半々であった。受講後の参加者アンケートを分析した(回答数35)ところ、半数程度は命綱に関する事前知識は全くなく、受講後には97%が「概ね習得できた」と答えた。装着によって「除雪作業の邪魔にならなかった」が68%、「安心感があった」が86%と概して好評であった。自由記述には「思ったよりも難しくなかった」など肯定的回答が多数あり、「1人で雪かきをせずチームでやることが安全につながるとわかった」など、外部支援者との協働での作業が安全に繋がることを示唆するコメントもあった。 2ヶ所では講習会実施に先立って3回のワークショップを事前に実施しており、住民の防災意識の啓発、実証実験に向けて住民自身が自発的かつ主体的に準備に関与するように導く手順についても手法としての骨格は構築できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
冬季の除雪に関して、外部支援者を受入れたことによりリスク認知が進み安全の意識が高まったか,地域内共助の意識が高まったか、など地域の減災コミュニケーションが促進されたかについて、具体的にモデル地域を選定し、住民との対話を重ね、実際に冬季に実証事例を積み上げることができたことの意義は大きい。また期待した程度の数のアンケート、ヒアリングのデータも蓄積できた。高齢化指標、過疎指標など地域社会の基本情報と積雪量、気温などの気象情報などを説明変数として、地域の豪雪に対するリスクを目的変数とする雪害危険度の分析に関しては、説明変数として採用すべき指標の整理と検討に着手した。目的変数である雪害データに関しては、新潟県について過去数十年のデータを既に入手して分析を始めている。これらのデータをGIS上で可視化し整理する作業はみ未着手であり、今年度から本格的に開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降、次の事項に取組む予定である。雪かき道場開催実績のある地域では,「指南書」,「カルタ」などのツールの学習・意識啓発効果についても検証する.またこれから「雪かき道場」を開催する地域においては,これらのツールを使って講習を行う前後での住民の雪害リスクへの意識の変化を調査する.また、これまでに得られたアンケートやヒアリングのデータについて、さらに詳細な分析をすすめ、ワークショップについても経験の蓄積を分析して、手法の確立を目指す。 雪害危険度分析については、背景情報となる地域性(気象特性,地理的特性,社会的特性)について,各種統計情報,警察,自治体の資料を収集し,GIS(地理情報システム)上に整理する.過去数十年間の雪害発生状況(発生日時,発生場所,事故の種別,被害者の属性(年齢,性別,職業))も含めて調査し,GIS上で他の情報と重ね合わせることによって,上記の雪害リスク意識調査の結果と比較して検討する.GISシステムについては,Google Map等の簡易のシステムを使ってプロトタイプを製作し,その後、本格的に市販GISを組み込んで試験運用を開始する.
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次年度の研究費の使用計画 |
新潟県で重点的に調査を進めてきたが、北海道、東北地域についても、雪害発生状況の調査を進め、各種資料の整理分析を進めて雪害危険度の評価に取組む。そのための旅費を計上する。命綱に代表される除雪安全の技術について、地域住民による実験・検証を行いながら普及を意識した技術に成熟させる。そのために、安全帯やアンカーシステムなど必要な資機材の購入及び試作の費用を計上する。雪害の現況とその危険度の可視化のためにGISシステムを購入する。以上の取り組み関して、大学院生の協力をあおぎながら実施するため、その謝金を計上する。
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