研究課題/領域番号 |
23510225
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
上村 靖司 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (70224673)
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研究分担者 |
関 嘉寛 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (30314347)
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キーワード | 雪害 / リスクコミュニケーション / 地域防災力 |
研究概要 |
本研究の目的は,有力な除雪支援者とは言い難い未経験の外部支援者の関与による減災プロセスの分析と,雪害に対する地域防災力向上のためワークショップ手法の確立により,雪害犠牲者の大幅低減に繋がる一般的・普遍的手法を見いだすことである.「越後雪かき道場」の取組は,地域内互助、近隣からの労働力提供という一般の除雪支援の枠組みと異なり、地域外(特に非雪国)からの参加者を募り,「労力の提供」よりは除雪というやや特殊な作業の「研修」が主たる目的となっている.そのため「除雪の担い手不足の解消」という課題の解決には直接つながらないのだが、これまでの取組から地域住民への安全意識啓発の絶好の機会になるという手応えを感じている。 今冬は、新潟県十日町市池谷と長岡市川口木沢,富山県立山町および南砺市「雪かき道場」を開催し、そのうちの2箇所とそれ以外に山形県内の4箇所と北海道札幌市で雪下ろし安全講習会を開催した。今冬は特に屋根に命綱を結ぶための固定具(アンカー)を長岡市木沢地区の一般住宅と倉庫の2棟に試験的に設置し、それを使っての命綱講習会を開催した。参加者に対するアンケートの詳細な分析はこれからだが、全ての参加者がアンカーに固定した命綱装着によって屋根除雪作業時に高い水準の安心感が得られたと回答した。むしろ外した時の不安感が装着前よりも増したという意見が多数あり、安全意識の高揚に極めて効果的であることがわかった。単なる地元住民を対象とする講習会に比べボランティア等の外部者支援者との協働での講習会がより心理的にも抵抗が少ないという声も聞かれた。 雪害リスクおよびリスクポテンシャル分布のGISによる可視化については、新潟、山形、秋田、青森、北海道の5道県の過去の雪害記録データを入手し、その分析を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
冬季の除雪に関して、外部支援者を受入れたことによりリスク認知が進み安全の意識が高まったか,地域内共助の意識が高まったか、など地域の減災コミュニケーションが促進されたかについて、具体的にモデル地域を選定し、住民との対話を重ね、実際に冬季に実証事例を積み上げることができたことの意義は大きい。また期待した程度の数のアンケート、ヒアリングのデータも蓄積できた。また直接リスクを軽減する具体的対策(命綱講習会の開催やモデルアンカーの設置など)についても、住民との対話を重ねながら実績を積み重ねており順調に目標を達成している。 高齢化指標、過疎指標など地域社会の基本情報と積雪量、気温などの気象情報などを説明変数として、地域の豪雪に対するリスクを目的変数とする雪害危険度の分析に関しては、説明変数として採用すべき指標の整理と検討に着手した。目的変数である雪害データに関しては、新潟県について過去数十年、山形県、秋田県、青森県、北海道については過去10年程度のデータを既に入手して分析を始めている。これらのデータをGIS上で可視化し整理する作業は着手したばかりであり、今年度に当初の目的のシステムを完成させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、次の事項に取組む予定である。雪かき道場開催実績のある地域で講習を行う前後での住民の雪害リスクへの意識の変化をヒアリングにより調査する.また、これまでに得られたアンケートやヒアリングのデータについてさらに詳細な分析をすすめ、ワークショップの実績を分析して、手法の確立を目指す。 雪害危険度分析については、背景情報となる地域性(気象特性,地理的特性,社会的特性)について,各種統計情報,警察,自治体の資料を収集し,GIS(地理情報システム)上に整理する.過去数十年間の雪害発生状況(発生日時,発生場所,事故の種別,被害者の属性(年齢,性別,職業))も含めて調査し,GIS上で他の情報と重ね合わせることによって,上記の雪害リスク意識調査の結果と比較して検討する.GISシステムについては,ArcGISを用いて雪害リスクの可視化システムを完成させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでは新潟県で重点的に調査を進めてきたが、北海道、山形、秋田、青森についても、雪害発生状況の調査を進め、各種資料の整理分析を進めて雪害危険度の評価に取組む。そのための旅費を計上する。命綱に代表される除雪安全の技術について、地域住民による実験・検証を行いながら普及を意識した技術に成熟させる。そのために、安全帯やアンカーシステムなど必要な資機材の購入及び試作の費用を計上する。雪害の現況とその危険度の可視化のためにGISシステムを購入する。以上の取り組み関して、大学院生の協力をあおぎながら実施するため、その謝金を計上する。
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