研究課題/領域番号 |
23510228
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
脇水 健次 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00240903)
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研究分担者 |
西山 浩司 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20264070)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 人工降雨 / 気象レーダー / 氷晶 / 液体炭酸 / レーダーエコー / 干ばつ害 |
研究概要 |
人工降雨に伴う増雨効果を的確に評価するためには,自然の降雨の影響がなるべく小さい気象状況を選び,実験を実施していくことが重要である.このためにも,人工効果のシグナルを最大限に検知できる雲の特性および,発生しやすい気象条件を十分に検討しておく必要がある.そこで本研究では,これまで人工降雨実験を実施してきた九州北部地方と山陰地方を対象として,雲厚,輝度温度およびレーダーエコーを用い,人工降雨の効果を判定しやすい冬季の雲特性について調査した.次に,人工の効果を判定されやすい雲が発現しやすい気象条件について,自己組織化マップ(SOM)により分類された冬季高層気象パターンの中から抽出した.その結果,当該地域において人工降雨を実施しやすい雲の条件は,(1)雲厚が800mから1600m,(2)輝度温度が-6℃から-14℃と判明した.一方,実験に適した気象条件として,(1)寒気が弱い北または西風卓越時,(2)寒気が並の強さで北西風卓越時と判明した.以上の解析結果を基に,北部九州で人工降雨実験を2012年2月9,19,27日と3回実施した.いずれも,冬型が緩み,レーダーエコー数が少ない状況であった.実験は,レーダーに表示されない(厚さ800~1000m)層積雲系を対象に,液体炭酸を雲の底部付近に撒布した.その結果,(1)液体雲水からなる雲の形態(雲と周辺との境界が明瞭)から氷晶を含む雲の形態(雲と周辺との境界が不明瞭であるが表面が滑らかな形態)へ変化したこと,即ち,液体炭酸の撒布による人工氷晶の生成を確認した.(2)撒布した積雲が発達し,雲頂付近がもりあがる現象も確認できた.しかし,降水の証拠となるレーダーエコーのシグナルを得ることができなかった.この理由として,観測上,氷晶が地面付近の低い高度で降雪粒子となり,レーダーに捉えられていなかったことが考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北部九州で2012年2月9,19,27日の3回人工降雨実験を実施した.いずれも冬型の気圧配置であったが,冬型が緩みかけた,レーダーエコーが少ない状況であった.この実験では,レーダーエコーに表示されない,厚さ800~1000mの層積雲系を対象にして,液体炭酸を雲の底部付近に撒布した.その結果,(1)液体雲水からなる雲の形態(雲と周辺との境界が明瞭)から氷晶を含む雲の形態(雲と周辺との境界が不明瞭であるが表面が滑らかな形態)へ変化したこと,即ち,液体炭酸の撒布による人工氷晶の生成を確認した.(2)撒布した積雲が発達し,雲頂付近がもりあがる現象も確認できた.しかし,降水の証拠となるレーダーエコーのシグナルを得ることができなかった.この理由として,観測上,氷晶が地面付近の低い高度で降雪粒子となり,レーダーに捉えられていなかったことが考えられる. 研究成果の一部は,学会(CIGR国際学会,雨水資源化システム学会,農業気象学会等)で発表済みである.
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今後の研究の推進方策 |
(1)非降水雲に対する液体炭酸撒布実験(航空機利用)を実施する.(2)前年度,実験実施時に把握できなかった低層(地面から1000m付近)での降水現象の把握を九州大学レーダーを用い,集中観測を実施する.(3)非降水雲に対する液体炭酸撒布後の数値シミュレーションの開発をする.(4)人工知能(AI)技術を駆使した非降水雲の発生環境診断手法の開発を通して,非降水雲から人工的に降水を引き起こす基礎的技術の開発をめざす.
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次年度の研究費の使用計画 |
<研究費の主な使用計画>(1)航空機を使用した人工降雨実験を4回実施(50万円/1回)するために使用する.(2)実験時の旅費や研究成果を国内の学会(水文水資源学会や気象学会)にて発表するための旅費として使用する.
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