研究課題/領域番号 |
23510233
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 一寿 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00322727)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ユビキチン / 出芽酵母 / プロテオミクス |
研究概要 |
蛋白質のユビキチン化修飾では、修飾される事自体に加えて、その修飾様式が基質蛋白質の運命決定に重要な意味を持つ。先ず(マルチプル)モノユビキチン化なのかポリユビキチン化なのかという事が重要な点で、次にポリユビキチン化の場合はどのLys残基で連結した鎖なのか(連結パターン)も考慮すべきである。しかし、修飾様式と基質蛋白質(及びその後の運命)の対応付けは、一部の基質を除きほとんどなされておらず、修飾様式側からの網羅的な視点が欠落した状況にある。そこで私は独自に開発したポリユビキチン化基質蛋白質の効果的濃縮・同定法(PAP-MS)と蛋白質の系統的絶対定量解析法(PCS-MS)を用いてユビキチン鎖の連結パターンに基づく基質蛋白質の網羅的解析と詳細な定量解析を行うことを目的とし、研究期間内の到達目標として以下の3項目を掲げた。1)7種類のmono-K Ubを用いて出芽酵母のPAP-MS解析を行い、連結パターン毎の基質候補リストを作成する。それぞれの代表的な基質に対してはPCS-MSによる確認作業を行う。2)外的刺激時(プロテアソーム阻害薬添加、セリンプロテアーゼ阻害剤添加、DNA障害、熱刺激時)において、1)と同様の解析を行う。3)上記データから各連結パターンの持つ意義を考察し、遺伝学的・生化学的手法により証明する。昨年度は、脱ユビキチン化酵素欠損株において蓄積したユビキチン鎖の連結パターンを解析することにより本アプローチの有用性を示すプロジェクトに注力し、複雑な連結パターンの存在を示唆する興味深いデータも得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は一種類のLys残基のみで連結・伸長する単純なパターン(同所連結パターン)のみを想定していたところ、前述のように複数のLys残基を利用する複雑なパターン(異所連結パターン等)の存在が示唆されたため。また、この複雑なパターンの持つ生物学的な意義の探求に労力を割いたためでもある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、外的刺激時(プロテアソーム阻害薬添加、セリンプロテアーゼ阻害剤添加、DNA障害、熱刺激時)に特異的に蓄積するユビキチン化基質タンパク質を連結パターン毎にリストアップすることを目標とする。またその際、前述の様に異所連結パターンなどの複雑な連結様式の存在を考慮に入れる。
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次年度の研究費の使用計画 |
質量分析器を用いた定量解析が中心となるため、大量の安定同位体標識アミノ酸が必要となり、その購入費用が研究費の大部分を占める予定である。
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