研究課題
根粒菌とマメ科植物が営む窒素固定共生は相利共生の代表的な例として知られている。共生菌である根粒菌のゲノムは、いわゆる主染色体に加えて、可動性の共生遺伝子クラスターが加わって成立している。しかしながら、共生に必要な遺伝子の最小セットの組み合わせは未解明である。本課題では、ミヤコグサ根粒菌の共生アイランドを実験的に最小化した株を作製することを目指している。本年度は以下の項目を実施した。1)根粒菌内で人工制御可能な発現ベクターと欠失プラットフォーム組み込み用ベクターの改良:広域宿主ベクターpBBR1の複製起点、接合伝達用のoriTを持ち、IPTGの添加により少なくとも7倍以上の強度差で発現調節可能な転写強度の異なる発現ベクター3種を構築した。これらのうち1つの派生物として、メガヌクレアーゼあるいは配列特異的リコンビナーゼ遺伝子を発現させるプラスミドを作製した。複製タンパク質の点変異を導入し、これらを温度感受性化した。また、欠失プラットフォーム組み込み用ベクターの薬剤耐性マーカーとして、ゲンタミシンとスペクチノマイシン耐性を持つ派生物を作製した。3)共生アイランド最小化を実体化するための菌株作製:ミヤコグサ根粒菌MAFF303099とR7A、NZP2037株の共生アイランド配列の比較からコア部分を抽出した後、ミヤコグサ根粒菌野生系統4株のゲノムについて次世代シーケンサー解析を行い、共生アイランド内の多様性を調べ、非コア領域6箇所を特定した。これら非コア領域のうち1箇所の両端に、欠失導入のためのプラットフォーム配列を組み込見込んだ株を作製、ついで配列特異的リコンビナーゼ発現用温度感受性プラスミドを導入して欠失株を作製した。得られた株は共生能を維持していた。他の5箇所についてもプラットフォーム配列を組み込むためのベクターを設計し、共生アイランド最小化を進行中である。
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Microbes and Environments
巻: 28 ページ: 275-278
10.1264/jsme2.ME12201