研究概要 |
ヒト癌細胞における遺伝子増幅領域のゲノム構造異常とその機能的な意義を明らかにして病因解明に迫ること、および増幅領域形成に共通するメカニズムを明らかにすることを目的として本研究をスタートさせた。当初計画していた、ErbB2を発現していない乳癌細胞株HC1143株にFISH法で同定された第19染色体上のNOTCH3遺伝子由来シグナルのうち、マーカー染色体上の遺伝子増幅しているNOTCH3遺伝子領域に注目してそのゲノム構造を明らかにすること、原発性体腔内リンパ腫PEL細胞株2株(OS-1およびPSu株)の共通増幅領域(1q31.3-q32.1)の詳細なゲノム構造解析をすること、については適切なDNAクローン取得が出来ず研究計画は進展していない。 他方、ヒト非小細胞肺癌細胞株NCI-H1299株に二本鎖切断とその後の非相同末端結合(NHEJ:non-homologous end joining)を積極的に誘発する目的で導入されたプラスミドDNAの挿入部位について、幾つかのクローンをFISH解析した。マーカー染色体上に単一挿入部位を保持している安定したクローンについて、導入されたプラスミドDNAプローブ(約7.2kb)を二分して別々に標識しFiber-FISH法を用いて詳細に解析した結果、染色体上の挿入部位においてプラスミドDNAがmulti copiesで増幅していることを見いだした。また、このマーカー染色体が5種類の染色体からなる再構成染色体であることも明らかにした。 さらに新たに、免疫不全マウスに連続継代移植された患者由来ヒト腫瘍細胞の継代5代目における染色体解析を行った。その結果、マウス脾臓内で増殖している腫瘍は、46, XX, t(2;11;14) ? の核型を示す均一な細胞集団であることが明らかになった。
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