研究課題
黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusが放出するシステインプロテアーゼのスタホペインにより、免疫系の機能に関わる免疫細胞表面分子が切断され、宿主の免疫系から本菌が逃避する可能性が指摘されている。その免疫抑制機構を解明するために、スタホペインの標的となる、免疫細胞(単球、好中球およびT細胞)の細胞膜上の機能タンパク質を、放射性同位元素を用いる放射能標識しと、2次元ゲル電気泳動および質量分析計を駆使することにより、網羅的に解析・同定することを本研究の目的とする。同定した細胞表面分子が関係する免疫細胞の機能に関わる、種々の病態に対する影響が明らかになれば、黄色ブドウ球菌感染症の予防法および治療法の開発に資すると考え、以下の実験を遂行中である。 研究実施計画に従い、健常人末梢血より調製した好中球、単球、およびヒトT細胞株Jurkatを用いて、それらの細胞表面タンパク質のみを放射性ヨウ素により放射能標識した。標識後の細胞を2等分し、一方はスタホペインで、他方は緩衝液のみで処理した。軽い遠心により細胞ペレットを回収し、タンパク質成分のみを沈殿により回収し、可溶化バッファーに懸濁し、それぞれを同時に2次元ゲル電気泳動を行った。泳動後、ゲルをシプロルビーにより全タンパク質の蛍光染色し、脱色処理後セロファン紙にはさんで乾燥させた。次いで乾燥したゲルをX線フィルムに曝し、スタホペイン処理の有無で放射性スポットのパターンを比較した。さらにヨウ素標識の効率を高め、より微量なタンパク質スポットを検出する目的で、ヨウ素標識ならびにスタホペイン処理について、手技や条件を変えて検討を行っている。乾燥ゲルスポットからの、トリプシンによるペプチド断片の回収率についても、より高い収率が得られるように改善を試みている。
2: おおむね順調に進展している
健常人末梢血より調製した好中球または単球、およびヒトT細胞株Jurkatを用いて、それらの細胞表面タンパク質を放射性ヨウ素でRI標識し、2次元電気泳動を行っている。現在までにその標識効率および検出される放射性タンパク質のスポットの感度について検討を行い、おおむね計画通りの結果が得られているが、さらに良い条件を探索中である。
スタホペインにより切断される白血球細胞表面タンパク質を可能な限り網羅的に回収し、質量分析計による同定を開始する。
計画に従い、放射性同位元素(NaI)、二次元電気泳動関係試薬、共同機器使用料、マウス飼育費などに使用する予定である。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件)
Cancer Sci
巻: 103 ページ: 455-463
10.1111/j.1349-7006.2011.02174.x
Gene Therapy
巻: 18 ページ: 874-883
10.1038/gt.2011.22
Microboiology
巻: 157 ページ: 786-792
Cancer Science
巻: 102 ページ: 697-705
10.1111/j.1349-7006.2011.01865.x
Identification of HLA-A2-restricted CTL epitopes of a novel tumor-associated antigen, KIF20A, overexpressed in pancreatic cancer
巻: 104 ページ: 300-307
巻: 102 ページ: 71-78
10.1111/j.1349-7006.2010.01780.x