②-1パラスペックル(PS)形成の分子機構 マウスNIH3T3細胞にヒトBACを導入し、マウス細胞中でヒトNEAT1 RNAを異所発現し、内在性PSに加えて外来性PSを同時形成するヘテロな実験系を構築した。内在性PSと外来性PSは常に独立して存在する。そこで、マウス細胞をフルオロウリジン(FU)とエチニルウリジン(EU)とで二重標識する新しいパルスラベル法を開発して、PS間のRNAの移動を観察したところ、内在性マウスPS同士においてさえRNAのやりとりが見られず、単一のパラスペックル顆粒内がFUラベルされた区画とEUラベルされた区画とに分かれていた。一方、FUとEU同時ラベルの場合を除き、二重標識されたPSは観察されなかった。このことは転写と共役したPS形成モデルを強く支持し、新たに転写されたRNAが既存のPSに供給されないことを意味するので、核内構造体の寿命がRNAで規定されているといえる。最終年度はこの系におけるPS形成をライブイメージングする実験系を立ち上げた。 ②-2 PSの核内分布様式と標的の同定 PSがNEAT1座位上で形成されることを踏まえ、PSと相互作用する遺伝子座位の核内分布様式を検討した。上記のヘテロな系ではマウスNeat1座位は19番染色体にあり、ヒトNEAT1は非19番染色体にある。プロテアソーム阻害剤MG132を添加するとPSが巨大化することが知られている。上記のヘテロな系でMG132がPS形成および核内分布様式に与える影響を調べたところ、マウスPSとヒトPSが独自に巨大化した。さらに、添加前には核内で離れていたマウスNeat1座位とヒトNEAT1座位とが、しばしば近接した。この現象はPS巨大化を介しており、PSに近接する他の遺伝子座位同士が、PS巨大化(を誘因する生理条件下)に伴い、核内で近傍に集積する可能性が考えられるので、このことを検証中である。
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